裁判例
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生命保険と破産決定後の保険金請求権
東京高裁平成24年9月12日決定です。
破産手続開始決定前に、破産者が長男を被保険者とする生命保険契約。
破産決定後に長男が死亡。破産者が保険金を受領。
破産管財人は、この死亡保険金も破産財団に属するとして引き渡しを求めたところ、破産者は、これは自由財産だと主張し、拒絶。
管財人が破産裁判所に引渡命令をし、これが認められる。
これに対して、破産者が即時抗告したというケースです。
破産手続では、破産の決定時点での財産が問題になります。
破産の決定時点では、保険事故が発生していないことから、保険金請求権は破産財団に属しないという主張がされたものです。
ただ、破産法34条2項では、
「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は、破産財団に属する。」
とされていて、停止条件付債権も、破産財団になると考えられます。
このような点から、東京高裁も、この保険金請求権も破産財団に属するという判断をしました。
保険金請求権も、破産者のものではなく、管財人が回収し、債権者への配当等に回されるということです。
「一般に、保険金請求権は、保険契約の成立とともに保険事故の発生等の保険金請求権が具体化する事由を停止条件とする債権(以下、具体化事由の発生前の保険 金請求権を「抽象的保険金請求権」という。)であって、抽象的保険金請求権のまま処分することが可能であるのみならず、法律で禁止されていない限り差押え を行うことも可能であるところ、破産手続開始決定が、破産者から財産管理処分権を剥奪してこれを破産管財人に帰属させるとともに破産債権者の個別的権利行使を禁止するもので、破産者の財産に対する包括的差押えの性質を有することに鑑みると、その効果が抽象的保険金請求権に及ばないと解すべき理由はない。し たがって、破産手続開始決定前に成立した保険契約に基づく抽象的保険金請求権は、「破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」(破産法34条2項)として、破産手続開始決定により「破産財団に属する財産」(同法156条1項)になるというべきである。」