裁判例
裁判例
債権者一覧表への載せ忘れと免責
東京地裁平成15年6月24日判決です。
破産者が、債権者一覧表に載せ忘れた債権がありました。
金融業者に対する保証債務でした。保証人になったというケースです。
金融業者は、債権者一覧表に載っていなかったので、自身の債権者は免責にならなかったとして、保証債務の履行を求める裁判を起こしました。
一審は、免責の効果が及ばないとして、金融業者の請求を認めました。
これに対して、控訴されたのが、本件です。
東京地裁は、このようなケースで、免責を認めました。
破産法253条1項では、免責されない債権を列挙しています。6号では、
破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)
との記載があります。
この「知りながら」の解釈が問題になりますが、この判決では「債権者名簿作成時には債権の存在を失念したことにより記載しなかった場合、それについて過失の認められるときには免責されない一方、それについて過失の認められないときには免責されると解するのが相当である。」としました。
そして、本件で、破産者に過失があるかというと、
「以上の認定事実によれば、控訴人が本件連帯保証契約を締結した平成一一年一月二八日から本件破産宣告に係る破産申立てをした平成一二年九月六日までには約 一年八か月が経過したにすぎないものの、控訴人は、主債務者から迷惑を掛けないなどと告げられた上、主債務者の事業が成功している旨聞いていたことから本件連帯保 証契約を締結し、その後、本件免責決定が確定するまでの間、被控訴人から本件保証債務の履行を求められたことや主債務者から何らかの連絡を受けたことがなかっ たものである。」
「本件連帯保証契約締結の経緯、控訴人の破産申立て当時の状況、破産申立てに至った経緯、理由及び控訴人が被控訴人 から本件連帯保証契約締結後本件免責決定の確定に至るまで本件保証債務の履行を求められたことがなく、その間主債務者とも連絡をとっていなかったという状況を 前提とすれば、控訴人が免責申立ての際に本件債権者名簿に本件保証債務を記載するのを失念したとしても不自然ではないというべきであり、したがって、それ について控訴人に過失があったとは認めるには足りないものである。」
として、過失がないと判断しました。
その結果、この債権についても、免責の効果が及ぶとされました。
破産申立時に提出する債権者一覧表に漏れがないように記載すべきではありますが、保証人になっていたようなケースだと忘れてしまうことも想定されます。
後から請求された際には、本判決を参考に、個別の事情を主張してみるのも有効と考えます。