自己破産と離婚の慰謝料、養育費、財産分与の関係を整理。神奈川県厚木市・横浜市の弁護士法人

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FAQ(よくある質問)

 

Q.自己破産と離婚のお金の関係は?

自己破産中に離婚、離婚手続中に自己破産ということはよくあります

2つの手続きが同時に進む場合、離婚のお金がどうなるのか問題になりますので、整理しておきます。

今回の内容は、

  • 自己破産中に離婚を考えている
  • 離婚手続中だが、自己破産を検討している

 

という人に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2022.8.26

 

自己破産と離婚のお金問題

離婚でのお金の問題は、主に3種類あります。

財産分与、慰謝料、養育費です。

これらの離婚給付と自己破産との関係が問題になります。

その際、これらのお金を払う側なのか、もらう側なのかによって、問題点が変わります。

破産者がお金をもらう側の場合には、そのお金が破産財団に属するかという問題になります。破産財団に属するのであれば、破産管財人によって回収、配当などに回されるのが原則で、自分の手元には残りません。破産財団に属しないのであれば、自分の手元に残せることになります。

破産者がお金を払う側の場合には、そのタイミングによって否認が問題になります。破産では、債権者を公平に扱うため、一部にだけ払うことは認められていません。離婚給付もこの規制に引っかかるのかが問題になるのです。

離婚と自己破産

 

破産財団とは

破産財団は、破産者の財産で、破産手続において破産管財人が管理し、処分する権限を持っている財産です。破産手続きで処分されるのが原則の財産です。

正確には、破産法2条14項に書かれています。

 

破産財団の範囲は、破産手続開始時に、破産者が持っている財産が前提です。

そのなかで、差押えが禁止されている財産、自由財産拡張の対象となっている財産は除きます。

 

破産財団に含まれる財産は、破産管財人により処分される可能性が高く、自分のものとは主張できないことになります。

そのため、離婚でもらえるお金がある、という場合に、破産手続きでそのお金が残せるかどうかが問題になってくるのです。

そこで、次に、離婚手続中に、破産決定が出た場合に、離婚手続きがどうなるか問題になってきます。

 

破産手続開始決定の効果

自己破産の申立をして、裁判所が破産の要件を満たすと考えると、破産手続き開始決定が出されます。

この破産手続開始決定により、破産財団に所属する財産の管理処分権は破産管財人に移るのです。

「破産財団」に関する訴訟手続も、中断します。

 

家事調停・審判は中断しない

このような訴訟手続の中断に対し、破産財団に関する家事調停・審判の場合には、どちらも中断しないとされています。

ただ、破産財団の財産に関する家事調停や審判については、破産管財人が受継します。財産の管理・処分なので、破産管財人が対応するわけです。

これに対し、破産債権に関する家事調停・審判、つまり払う側、債務の方では、まず債権者から破産手続きで債権届出をします。ここで、破産管財人からの異議がなければ債権は確定します。あとは、他の債権と同じように配当になるかどうか、手続を待つ流れです。

破産管財人から異議が出された場合に、どうするのかは考え方が分かれています。

破産管財人が調停や審判を受継するという考えもありますし、破産手続で債権が争われた場合に使われる査定申立てをすべきという考えもあります。

このように、破産者が離婚でお金をもらう側の場合には、破産財団が問題になります。これに対し、破産者が払う側の場合には、否認の問題となります。

離婚と自己破産

 

破産管財人による否認権行使とは

離婚時の給付などは、否認権との関係で問題になります。否認権とは、取引を取り消すことができる制度です。

破産者が、危機時期以降のタイミングで、不当に財産を減少させたり、特定の債権者のみに弁済したりする行為を否定できる制度です。

このような不公平な行為を認めると、適正かつ公平な財産の清算という破産手続きの趣旨が否定されます。

否認権が問題になるシーンとして、詐害行為否認と偏頗行為否認があります。

詐害行為は、全体の責任財産を減らしてしまうこと、偏頗行為は、一部の債権者にだけ返済することです。

離婚の財産分与のタイミングが、危機時期以降の場合には、破産管財人により否認権を行使するのかどうか、検討されることになります。

 

 

自己破産前に財産分与をする

離婚時に多くの財産分与をした後に、自己破産の申立をする人もいます。自己破産前に自宅を配偶者名義に財産分与すれば確実に残せると考えて、実行してしまう人もいます。

しかし、自宅の登記情報などは簡単に調査されます。

債権者としては、このような財産分与がおかしいのではないかと主張してきます。この問題は、破産管財人による詐害行為否認の問題です。

破産と財産分与

 

破産管財人の否認権と似た制度として、民法上の詐害行為取消権があります。

財産分与と詐害行為取消権では有名な判例があります。

最判昭和58年12月19日です。

この判決では、「分与者が既に債務超過の状態にあって当該財産分与によって一般債権者に対する共同担保を減少させる結果になるとしても、それが民法768条3項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為として、債権者による取消の対象となりえない」としました。

判例では、分与者が債務超過であるという一事によって、相手方に対する財産分与をすべて否定するのは相当でないと指摘されています。

不相当に過大でないなら、財産分与が否定されないという判断です。

 

不相当に過大な財産分与は否認

この特段の事情がある場合には、不相当に過大な部分の限度で詐害行為として取り消されるというのが裁判所の立場です。全部が取り消されるのではなく、一部、行き過ぎた部分だけが取り消されるという内容です。

 

このような不相当に過大な財産分与が自己破産前にされている場合には、破産管財人による詐害行為否認の主張がされるリスクが出てきます。自己破産の申立をする側としては、財産分与がある場合には、全体の財産や、離婚に至る経緯等を説明し、不相当に過大なものではない、特段の事情はないことを示していくことになるでしょう。

 

離婚裁判などでは、財産分与は、原則として2分の1基準が採用されています。配偶者の特殊な資格等で財産が形成された場合には、この数字が多少は変動しますが、出発点は2分の1基準ですので、ここから、過大かどうかを判断することになるでしょう。

また、財産分与の判断の際には、債務を控除することもあります。たとえば、財産が1000万円あっても、債務が500万円ある場合には、財産分与の対象は500万円、これを分けるので、250万円ずつという考えです。

債務を控除する考え方は、住宅ローンが残っている不動産を分けるかどうかの際にも採用されやすいです。住宅ローンのほうが大きいオーバーローン状態の物件であれば、そもそも財産分与の対象にならないとされることも多いです。

財産分与が過大かどうか判断する際には、2分の1基準をスタートとして、このような債務控除をするべきか、どこまでするかが検討されることになるでしょう。

 

財産分与と偏頗行為否認

不相当に過大かどうかは、詐害行為否認の要件として判例が示しているものです。

では、もう一方の偏頗行為として否認されるリスクはどの程度あるのでしょうか。

これについては、考え方が分かれています。

財産分与については、身分行為に伴う特殊性から、偏頗行為否認の対象にならないとする考えもありますが、財産分与請求自体は、財産権のため離婚とは切り離して考え、通常の債権と同じように、偏頗行為否認がされるリスクがあるとする考えもあります。

後者の考えであれば、まず、不相当に過大な財産分与がされた場合には、その部分が詐害行為否認となり、次に、不相当に過大でない部分についても偏頗行為として否認されるリスクがあることになります。

 

離婚慰謝料と否認権

財産分与以外に、離婚では慰謝料も問題になります。

離婚慰謝料と自己破産

慰謝料について、適正額であれば、破産者に賠償義務があるので、詐害行為否認の対象とはならないとされます。

これに対し、適正額でなければ、その部分は詐害行為否認の対象となるでしょう。

慰謝料名目で相場以上の支払いをすれば、否認リスクは上がるわけです。

一方で、偏頗弁済否認については、慰謝料についても通常の債権と同じように扱われます。

離婚という身分行為に関するものではありますが、金銭債権ですので、他の損害賠償請求権と同じく、不公平な弁済をすれば、偏頗行為否認の対象となります。

 

養育費と否認権

財産分与、慰謝料と並んで離婚時に問題となるお金には、養育費があります。

養育費と否認権

養育費は、財産分与や慰謝料と比べると、より身分行為に密接な権利です。

差押えの取り扱いなど民事執行法でも特別扱いされています。

毎月、発生している養育費は、自己破産の準備中、手続中も支払を続けて問題ありません。

過去の養育費未払分がある場合、支払不能のタイミングで支払があった場合、不相当に多額の支払であるような場合には、偏頗行為否認の問題が出てきますが、そこまでの金額でなければ、大丈夫であると言われます。実務上も優先度が高い支払いと判断されやすいです。

ただし、将来の養育費を前払いで一括して支払っていたりすると、否認されるリスクは高まります。

大学の学費分などの場合には、このような支払いも相当とされる可能性はありますが、個別判断となるでしょう。

 

滞納養育費支払が否認された裁判例

滞納養育費の支払いについて、偏頗行為否認を認めた裁判例として、東京地裁平成30年5月30日判決があります。

生命保険の解約返戻金約56万円の入金があり、ここから、50万円を滞納していた養育費及び学費の趣旨で支払ったという事案です。この送金が、自己破産申立ての前日であったこともあり、管財人が偏頗行為否認を主張、裁判所も、滞納養育費等の破産直前の支払は、本件事実関係のもとでは、偏頗行為に当たるとして、否認を認めています。

受け取った養育費は返さなければならなくなります。

 

 

破産管財人による否認権の行使方法

破産管財人が離婚給付に対して、否認権を行使すると判断した場合、法的な手続には否認請求と否認訴訟があります。

一般的には、これらの法的手続をとる前に、破産管財人から対象者に対して、否認する旨の通知、連絡をして交渉によって解決を試みます。それでも応じない場合に、これらの法的手続きをとる流れとなるでしょう。

 

否認請求の手続き

破産法174条1項では、否認請求では、その原因事実を疎明する必要があります。

尋問などによる立証は予定されておらず、書面での証拠、書証で示せる場合に使われやすい手続です。

否認請求が認められても、相手方が異義の訴えを提起すれば、訴訟手続に移ります。

交渉で解決が難しく、相手方が争っているような事案では使いにくい制度です。

このような場合には、最初から否認の訴えの手続がとられるでしょう。

裁判所の手続にさえなれば、早期に和解ができそうな事案では、否認請求が使われることも多いです。

 

財産分与回収前の自己破産

財産分与請求権の内容や金額が確定したのに、回収する、名義変更などをする前に、相手が自己破産をした場合には、財産分与請求権は、破産債権になります。

優先的に扱われる債権にはならず、破産債権であるとするのが裁判例です。

そのため、優先的に財産から回収はできず、債権届をして配当を受けるかどうかという通常の債権者と同じ流れになります。離婚慰謝料も同じでしょう。

 

 

離婚のお金をもらう側の問題

破産者が離婚関係の支払いをする場合には、否認制度との関係、債権者との関係が問題になります。

これに対し、破産者が支払を求める側である場合もあります。

破産者が損害賠償請求権を持っている状態で自己破産をした場合には、この請求権は、破産財団に属することが多く、破産管財人が請求・回収することになります。

そこで、離婚の場合も問題になります。これは、離婚慰謝料や財産分与請求権などが破産財団に属するのかという問題です。

離婚と自己破産

 

受領後の自己破産

まず、離婚した後、財産分与や慰謝料として回収した後に、自己破産となった場合には、残っているお金は破産財団になります。

預貯金や現金として残っている場合には、そのお金は、自由財産分を除いて破産財団になります。

問題は、まだ回収していない場合です。

 

未回収慰謝料と自己破産

先に慰謝料を検討します。

損害賠償請求については、交通事故による損害賠償請求と自己破産の問題があります。

交通事故の損害賠償請求でも、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料が請求できます。このような請求ができる状態で自己破産をする場合が問題になります。

自己破産の準備中に交通事故に遭ってしまったような場合に、その慰謝料請求権は破産手続で破産財団に組み入れられるのか、配当等に回されてしまうのかという問題です。

慰謝料請求権は、一身専属性を有するとされます。

一身専属性とは、その人だけに帰属する性質です。

一身専属権であれば、破産法34条3項2号にある「差し押さえることができない財産」になります。これにより、破産財団に属しないことになります。

ただ、慰謝料の請求権のような金銭請求の場合、もともとは一身専属性を持つものの、回収時にはお金になり、一身専属性を失います。

回収後の預貯金口座であれば、差し押さえ対象になるのが原則です。

 

一身専属性がなくなる時期

一身専属性が失われるタイミングについては、考え方が分かれてしまっています。

つまり、答えがない問題なのです。

一つの考え方は、慰謝料を請求する意思が外部に表明されたタイミングとするもの。慰謝料請求など、外部に表明すると、破産財団に帰属するので、その後は、破産管財人が離婚慰謝料も請求できるという考えです。

これに対し、具体的な金額が決まった時点で一身専属性がなくなるという考えもあります。

この考えだと、破産手続開始前に慰謝料請求をしていても、相手が争うなどして、金額が決まっていなければ、破産財団には帰属せず、そのまま回収できることになります。

明確な考え方が確定していない以上、破産管財人は、破産財団として取り扱うよう求めることが多いでしょう。

 

財産分与と破産財団

離婚に伴う財産分与請求権も破産財団になるか問題になります。

自己破産と財産分与

破産財団については、破産法34条1項で「破産手続開始の時において有する」、同条2項の「破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」になるのか、が問題になります。

財産分与請求権が、離婚自体で発生するのか、財産分与自体の協議や審判で発生するのかによって、結論が変わります。

仮に、破産決定時にまだ財産分与請求権が発生していなかったとしても、破産法34条2項が問題になります。

「破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」は破産財団を構成するためです。

破産手続開始決定前に離婚が成立しているならば、将来の請求権として破産財団を構成すると判断されることになります。

ただし、慰謝料と同じく、財産分与請求権でも一身専属権ではないかという問題も出てきます。

 

財産分与請求権の性格

財産分与には、複数の要素が含まれています。

財産分与請求権は、婚姻時の共有財産を分ける、清算的なものが中心ですが、それ以外に扶養的なもの、慰謝料的なものも含まれることがあります。

離婚に関する裁判例でも、このような表現が使われることも多いです。

財産分与の請求をしている手続中に、自己破産をしたような場合には、慰謝料的な部分に関しては一身専属性が問題になるものの、他の権利については、破産財団となりそうです。

 

 

財産分与で取戻権の主張は難しい

配偶者が自己破産をした場合に、権利主張をしたいという声もあります。

破産法では、取戻権というものがあります。

債権者などが、破産財団に対し、自分の財産だから戻せと求める権利です。

離婚での財産分与も、これに類似する考え方がありえます。

婚姻中の財産が共有財産だとして、配偶者にも権利があるならば、破産者名義の財産であっても、半分は自分の財産だから戻せと求めてくる人がいてもおかしくありません。

この点については、裁判例を見ると、最判平成2年9月27日は、財産分与請求権について取戻権の行使はできないとしています。破産管財人に請求はできないという結論です。

 

財産分与と仮差押え

ちなみに、財産分与請求では、仮差押えが使われることがあります。

離婚前に、財産分与請求権を被保全債権として、配偶者の財産を仮差押えしておく民事保全です。

よくあるのが、夫が退職しそう、離婚を希望するが退職金を押さえておきたいという仮差押です。

このような民事保全はできますが、回収までできるものではないので、民事保全が使われるからといって、破産手続きで財団に対し、離婚前の財産分与請求ができるという結論にはなりません。

逆に、婚姻中の夫婦の片方が自己破産をしたからといって、配偶者の資産に対し財産分与請求権があるとして、回収に動くということも考えにくいです。実務上もありません。

財産分与請求を破産手続きでするには、少なくとも、離婚という事実がないと難しいといえるでしょう。

 

未回収養育費と自己破産

最後に、未回収養育費がある状態での自己破産では、これが破産財団になるかという点が問題になります。

基準時である破産手続き開始決定後に発生した養育費は、破産財団にならず、もらえます。

養育費の合意があれば、通常、毎月発生する権利ですので、未回収の滞納養育費は、金銭請求権として破産財団になりそうです。

ただ、養育費の性質は、子に対するものではあるので、自由財産拡張で柔軟に対応することになるのではないかと考えます。

養育費と自己破産

 

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