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FAQ(よくある質問)

 

Q.破産財団、自由財産とは?

自己破産手続きのなかで、破産財団、自由財産という言葉が出てくることがあります。

破産者にとって、手続き後に残せる財産なのか、破産管財人によって処分される財産なのか、大きな影響がある言葉ですので、解説をしておきます。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.7.30

破産財団とは?

破産法上、破産財団といわれることがあります。

破産管財人が債権者集会なので報告するときに、この言葉が使われたりします。

「破産財団に組み入れろ」などと支払いを要求されることもあります。

この破産財団は、管財人の管理に置かれた財産の集合体のようなものです。

 

破産者が所有している財産は破産財団を構成します。

預貯金、保険、車、不動産、動産、債権、有価証券のほか知的財産権や営業上のノウハウなども破産財団となります。

ただし、身分法上の権利や人格権、扶養請求権など譲渡が許されない権利は、破産財団には含まれません。

 

破産財団の基準時は?

時期的な基準としては、破産手続開始時に破産者が所有している財産となります。

破産手続開始後に得た給料、収入は、新得財産と呼ばれ、破産財団には含まれません。破産者の新しい生活資金として必要なものでもあります。

ただし、破産者が、破産手続開始前に生じた原因に基づいて行える将来の請求権も破産財団に属するとされます。

停止条件付債権や期限付債権のなかで、破産手続開始決定時には、条件が未成就だったり、期限未到来であったりしても、含まれることになります。

賃貸借契約に基づく敷金返還請求権なども、請求できるのは明け渡し後ですが、破産財団に含まれます。

 

破産財団と退職金

自己破産では、退職金も問題になります。

会社を退職していない場合、退職金債権は発生していません。将来に退職したときに発生する債権です。

ただし、退職金債権は、支給条件が雇用契約、退職金規定等で明確化されている場合、賃金の後払い的性格となります。

そうすると、開始決定前の労働に対応する部分は、将来の請求権として破産財団に含まれます。

ただし、退職金には差押禁止部分があるので、これは除外することになります。

また、退職金については将来の未確定部分があるため、破産開始決定時に退職していない場合、現時点での退職金見込額の8分の1相当額を破産財団に含めるという運用がされています(神奈川県等、多くの裁判所)。

開始決定時に退職していたり、退職時期が近い場合、退職金見込額額の4分の1が破産財団に属するとされます。これは、未確定の部分が少なくなるからです。

 

ただ、破産管財人は、破産者が一方的に退職させることはできません。

雇用契約は、労働者にとっては、一身上の法律関係であるともされています。

 

差押禁止財産と破産財団

法律上、差押禁止財産とされているものは破産財団から除外されます

民事執行法上の差押禁止財産のほか、特別法上の差押禁止財産、扶養請求権など一身専属性があり性質上差押えの対象とならない財産は、破産財団とはなりません。

特別法上の差押禁止財産には、恩給を受ける権利や、健康保険給付、労働者が補償を受ける権利、生活保護を受ける権利、信託財産等があります。

 

慰謝料請求権と破産財団

身分上の権利は、一身専属性があるとされます。そのため破産財団となりません。

ここで、慰謝料請求権はどうかという問題があります。

慰謝料請求権については、帰属上の一身専属権ではないものの、行使上の一身専属権であるとされています。

行使するかどうかは、その人の自由という性質です。

そのため、性質上差押えの対象とならないとされ、破産財団に含まれないのが原則です。

 

ただし、慰謝料請求権を行使したり、その金額が確定した場合には、一身専属性を失うとされます。

そのため、このような慰謝料は、差し押さえることができるようになったものとして破産財団に属するとされます。

 

 

自由財産とは?

破産者が、破産手続開始時という基準時に所有していたものの、破産財団を構成しないものは、破産手続開始決定後も破産者が自由に管理したり処分できたりします。

このような財産を自由財産と呼びます。

本来的自由財産と呼ぶこともあります。

まず、差押禁止財産は自由財産となります。

それ以外に、自由財産の拡張によって認められた財産や、破産管財人が破産財団から放棄した財産が自由財産となります。

破産手続開始後に破産者が取得した財産は、新得財産と呼びますが、これも自由財産に含めて考えることもあります。

 

99万円の現金と自由財産

債務者に対する差し押さえをする際、すべての現金を差し押さえることはできず、一定額は差押禁止とされています。

債務者の生活を守るためです。

「強制執行において差し押さえることのできない金銭」は、民事執行法131条3号で、標準的な世帯の2カ月間の必要生計費を勘案して政令で定めるとされています。

民事執行法施行令1条では、統計の数字をもとに、66万円としています。


破産手続における自由財産として、現金として認められる額は、標準世帯の3カ月間の必要生計費に相当する額とされていますので、66万円に2分の3を乗じた99万円とされます。

この99万円という数字が独り歩きしていることがあるのですが、これはあくまで現金として所持していた場合の話です。

申立前に現金化したような財産は、もともとの財産として評価するものとされています。

たとえば、申立直前に保険を解約して現金90万円を持っていたという場合、この90万円は、現金として評価するのではなく、保険と同一視します。

そのため、90万円だから自由財産と言い切ることはできず、保険として、自由財産拡張が認められるかどうかがポイントになってきます。

 

自由財産の拡張

自由財産の拡張は、法律上は自由財産でない財産も、事案に応じてより柔軟に自由財産として扱う、自由財産の範囲を拡張して、自由財産と同視するという制度です。

この自由財産拡張の申立てができる期間は「破産手続開始の決定があった時から当該決定が確定した日以後1月を経過する日までの間」とされています。

この期間は裁判所の裁量で伸長できます。

それ以外に、申立によらずとも、裁判所の職権で自由財産の範囲の拡張をすることも認められています。

自由財産の拡張は、一つの裁判なので、破産者の置かれた状況等によって、認められるか変わります。

 

たとえば、扶養家族が多かったり、医療費がかかったり、仕事や日常生活に不可欠な物だったり、破産者の収入、年齢等も考慮されます。

交通に不便な地域であれば車を自由財産として残すことが認められやすいですが、複数台だと微妙になってくる、というような感じです。

また、破産者のもともとの自由財産の種類や額も考慮されます。

裁判所によっては、自由財産もあわせて99万円までは緩やかに自由財産拡張を認めるということもあります。

破産者に財産が残りすぎるのは、債権者との工兵条、望ましくないという考えでしょう。

 

裁判所が自由財産の範囲の拡張の裁判をする際には、破産管財人の意見を聴かなければなりません。

極端な事例でない限り、管財人の意見が尊重されやすいです。

 

自由財産拡張の運用

自己破産の運用では、裁判所によって、一定額までの財産は自由財産拡張があったものとみなす方法が採用されています。

たとえば、保険については、解約返戻金の見込額が20万円以下の場合には破産財団を構成しないものとして扱ったりする運用です。

複数の保険がある場合には、総額で判断されることもあります。

居住用の家の敷金返還請求権については、実際に退去する予定がなければ、回収されるものでもないので、自由財産拡張の裁判があったものとみなして、破産財団に含めない扱いがされることが多いです。

退職金についても、支給見込額の8分の1相当額が20万円以下ならば、破産財団を構成しないという扱いがされることが多いです。

 

破産管財人が破産財団から放棄した財産

破産管財人は、処分困難な財産を、破産財団から放棄することがあります。

処分できず、お金に換えられなければ配当の原資になりません。

不要な動産類、処分できない私道共有持分などの不動産、回収不能な債権など放棄されることが多いです。

管財人が放棄した財産は、自由財産となります。

 


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