自己破産記録の閲覧
FAQ(よくある質問)
Q.自己破産の記録の閲覧・謄写は?
自己破産事件で、裁判所に保管されている事件記録を閲覧できるか、質問されることがあります。
自己破産事件は、裁判所が取り扱う民事事件ではありますが、民事裁判とは違う取り扱いがされています。
今回の内容は、
- 自己破産で裁判所に提出した書類は閲覧されるか
- 他人の自己破産記録を確認したい
という人に役立つ内容です。
自己破産事件記録の閲覧謄写
裁判所が取り扱う事件で、一般の民事裁判は、公開を前提としています。
これに対し、自己破産事件は、原則的には非公開の手続です。
自己破産事件と、全く関係がない第三者に自己破産の記録を閲覧させる必要もありません。
ただし、自己破産の手続は、透明性も求められます。
公正な手続にするには、破産債権者その他の利害関係人の手続関与も認める必要があります。
そこで、自己破産事件では、民事訴訟手続の閲覧、謄写の手続を前提としつつも、閲覧や勝写を請求できる者やその対象書類についての特則を設けています。
自己破産事件記録を閲覧請求できる人
まず、記録を閲覧請求できる人についてのルールです。
請求権者は、利害関係人に限られるとされています。
利害関係とは、対象となる自己破産事件について、法律上の利害関係を指すとされています。
事実上又は経済上の利害関係では足りないとされています。
具体的に、利害関係を有する者として、まず、破産手続開始の申立人が挙げられます。申立をした本人ですので、利害関係があるとされます。
次に、破産者本人又はその代表者が挙げられます。自分自身の破産事件ですので、利害関係があります。申立人以外に破産者が記載されているのは、自己破産ではなく、債権者申立などもあるからです。
次に、破産管財人や、保全管理人も挙げられます。通常、破産管財人は、申立書類の副本を受領しますが、裁判所にある記録を確認することもできます。これらの人は、自身の活動に必要なため、利害関係があるとされます。
最後に、破産債権者や財団債権者が挙げられます。破産事件の内容によって、自身が弁済、配当を受けられるかどうか、その金額などに影響を受けるため、利害関係があるとされています。
破産者に対する昔の債権者や、かつての取引先、破産財団の不動産などの財産を購入しようと希望している人は、利害関係なしとされます。
ただ、個別の運用によって利害関係があるかどうか判断が分かれる事例もあります。
たとえば、別除権者、破産財団の財産を所持している人、破産者の株主、従業員等が利害関係人とされることもあります。
破産事件記録の閲覧や謄写ができる時期
これらの人が記録の閲覧請求をできるとしても、時期的な制限があります。いつでもできるものではないのです。
破産手続開始の申立人については、制限はありません。
しかし、債権者や債務者は、破産決定前に、強引に回収したり、財産を隠したりする危険性があります。そうすると、破産手続きの公正さはなくなってしまいます。
そこで、破産手続開始の申立てがあった後、裁判所で保全や破産手続についての判断(破産手続開始決定)がされるまでの間については、一定の期間は閲覧や謄写ができないとされています。
自己破産記録の閲覧謄写の手続
閲覧や謄写の認めるかどうか判断をする人は、実は裁判官ではありません。
裁判所書記官です。
閲覧等をしたい利害関係人は、裁判所書記官に対して請求します。
この閲覧や勝写請求については、その請求に係る文書等を特定するに足りる事項を明らかにすることが求められます。
何の書類を閲覧するのか特定しないといけません。
また、請求ごとに150円の手数料が必要です。
破産管財人による閲覧制限の申請
破産管財人が業務を遂行するのに、記録を開示されてしまうと支障が出るという場合には、閲覧等を制限することができます。
裁判所に書面を提出する破産管財人からして、関係者に対しても、公開に適さないと判断する資料も出てきます。
財産の処分や否認権行使に関する情報など、極めて重要な情報を記載した文書が開示されてしまうと、その後の換価業務になどに悪影響が出ることもあります。
そのような場合には、破産管財人は、裁判所に対し文書が提出できなくなってしまいます。
このようなことがあると、裁判所に十分な情報提供がされず、裁判所も判断しにくくなってしまいます。
そこで、破産管財人が、破産財団の管理や換価に著しい支障を生ずるおそれがある部分が文書内等にあると疎明したうえで、閲覧制限の申立をすることで、裁判所はこれを制限することができるとしました。
この制限があると、申立をした破産管財人以外は、閲覧や謄写の制限を受けることになります。
利害関係人も破産者も閲覧できなくなります。
閲覧制限の対象となる文書とは
破産管財人などから閲覧制限の申請ができる文書は限られています。
まず、破産者の事業継続について、裁判所からその許可を得るために提出された文書があります。
また、動産処分、不動産の任意売却など、破産管財人の換価業務に関して裁判所の許可を得る際に提出された文書もあります。
また、警察上の援助を求める場合の許可を得る際に提出された文書や、保全管理人が債務者の常務に属しない行為をする場合の許可申請時の提出文書等も含まれます。
破産管財人による閲覧制限の申立
破産管財人による閲覧制限の申立ては書面でしなければならないとされています。
その際、文書の支障部分を特定しなければないとされます。加えて、その対象文書から支障部分を除いたものを作って、裁判所に提出しなければならないとされています。
閲覧の申立がされたときに、制限された文書をそのまま開示できるような仕組みです。
この手続は、対象文書を裁判所へ提出する際に申立てをしなければならないとされています。
ただ、提出後に申立てがされた場合でも、直ちに不適法となるわけではないとされ、裁判官の判断で制限を認めることはあります。
裁判所による閲覧等制限の決定
破産管財人等から、閲覧制限の申立てがされると、裁判所が判断します。
閲覧制限の決定が出された場合、不服申立てとして即時抗告ができます。
ただ、決定が確定するまでの間についても、申立てに伴う暫定的な閲覧制限が続きます。
確定するまでの間も、支障部分の閲覧請求等は認められません。
閲覧制限申立の却下
破産管財人からの閲覧制限申立てを却下する決定が出されることもあります。
この場合、即時抗告ができます。
却下決定は、破産管財人などに送達する方法で告知されます。即時抗告の期間は、送達を受けた日から1週間とされています。
閲覧制限が認められた場合の手続
閲覧制限の申立てを認める場合は、その決定は、相当と認める方法で告知すれば良いとされます。
この場合、申立てをした者は、対象文書から決定により特定された支障部分を除いたものを作成して裁判所に提出しなければならないとされています。裁判所から破産管財人への告知の際には、このような文書等を提出するよう求められるものと思われます。
ただ、最初の申立て時に特定した支障部分と、裁判所の決定で特定された支障部分が同じであれば、最初に提出した文書が使われるので、改めて提出をする必要はありません。
閲覧等制限決定の取消しの申立て
一度された閲覧制限も取り消されることはあります。
利害関係人は、閲覧の制限がされた支障部分について閲覧等を求め、閲覧制限の決定の取消申立ができます。
申立の際には、「破産財団の管理又は換価に著しい支障を生ずるおそれ」を欠くこと、あるいは欠くに至ったことを理由として申立をします。
この取消し申立てに対する決定は、申立てを認められても、却下されても、即時抗告ができます。
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