自己破産の破産犯罪とは?
FAQ(よくある質問)
Q.自己破産の破産犯罪とは?
破産法では、民事ではなく、刑事事件になる破産犯罪行為も書かれています。
免責になるかどうかという問題以上に、懲役刑などの刑事罰を受けることになってしまうリスクがある行為を解説していきます。
今回の内容は、
- 自己破産のデメリット・リスクを知っておきたい
- 自己破産前に財産処分、偏頗弁済などしても大丈夫?
と考えている人に役立つ内容です。
破産犯罪とは
破産犯罪とは、破産法に規定されている犯罪行為です。
破産法では、犯罪になる行為も規定され、罰則規定が設けられています。
破産法265条以下に規定されています。
破産犯罪についての取り扱いは、それほど多くはなく、過去の統計でも、最大で年間57人が受理件数とされています。
よほど悪質な事件の場合には、破産犯罪での検挙があり得ます。
多くの罪は破産者に適用されます。一部は、贈収賄や任務違背など破産管財人に適用されるものもあります。
今回は、破産者や債権者などに適用される犯罪類型を解説していきます。
詐欺破産罪
破産法265条に、詐欺破産罪の規定があります。
破産犯罪の中でも、もっとも適用が多いのが詐欺破産罪です。
こちらの行為は別に詳しく解説しています。
詐欺破産罪では、債権者を害する目的で、財産を隠す、損壊する、仮装する、現状改変で価格を毀損、不利益処分などが処罰対象になっています。
10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金と重い罪です。
Q.詐欺破産罪とは?
特定の債権者に関する担保供与の罪
破産法266条では、特定の債権者に対する担保供与の罪が記載されています。
特定の債権者に対する債務について、他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって債務者の義務に属せずまたその方法もしくは時期が債務者の義務に属しないものをし、破産手続き開始の決定が確定したときは、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金に処するとされています。 こちらも併科あり。
非義務の偏頗行為が問題とされます。期限前弁済などです。
偏波行為については、破産管財人による否認の対象とされたり、免責不許可事由ともされていますが、この要件を満たせば、さらに刑事罰の対象とされることになります。
偏頗行為は、債権者間の公平を害するのでこのような規定がされています。
「特定の債権者に対する債務について」とあるので、複数でも構いませんが、債権者や債務は実在していることが必要です。
債務の消滅に関する行為は、支払うという弁済だけではなく、代物弁済や更改も含まれます。
説明及び検査の拒絶等の罪
破産法268条では、説明や検査の拒絶などの罪が規定されています。
説明を拒んだり、虚偽の説明をすると、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金等に処せられます。こちらも併科あり。
破産手続きを適正に進めるためには、必要な情報が破産者から提供されることが大事です。
そのため、説明義務等を課しているのですが、これが果たされない場合には罰則規定までも設けているということです。
虚偽説明などは、免責不許可事由とされているだけではなく、処罰までされることになります。
破産手続きで説明すべき事項は、破産に関する事項であることから、破産自体と関連性がない事項については対象から除外されます。ただ、ここでの「関連性」については、破産に至る経緯や債務者の資産状況、負債状況など広く含まれるとされます。
検査の対象となるのは、破産財団に関する帳簿、書類その他の物件とされており、こちらも破産に関連しないものは対象から除外されます。
重要財産開示拒絶の罪
破産法269条では、重要財産開示拒絶の罪も規定されています。
破産者が、書面の提出を拒んだり、虚偽の書面を裁判所に出したときには、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金とされています。こちらも併科あり。
説明拒絶も虚偽説明も、いずれも危険犯とされ、説明を拒んだとき、虚偽の説明をしたときに、既遂となります。
破産管財人の業務に支障が出ることは要件とされていません。
破産者が裁判所に出した書類について、重要財産の一部しか記載しなかったような場合には、全体像について虚偽の書面を提出したものとされてしまいます。
物件隠滅の罪
破産法270条では、債権者を害する目的で、債務者の業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅、偽造、変造した者は、破産手続き開始決定が確定したときは、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処するとしています。併科あり。
刑法の証拠隠滅に近いもので、隠滅、偽造、変造が規制されています。
偽造については、刑法の文書偽造罪とは異なり、作成名義人の変更だけでなく、広く関連性を装う行為も含まれるとされています。
審尋での説明拒絶の罪
破産法271条は、破産審尋、免責審尋での説明を拒んだり、虚偽説明をしたときは、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処するとしています。併科あり。
こちらも免責不許可事由とされるだけではなく、破産犯罪となるものです。
破産管財人の職務妨害の罪
破産法272条では、破産管財人の職務妨害の罪が規定されています。
威力や偽計を用いて、職務妨害すると3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処するとしています。併科あり。
偽計や威力は、刑法の業務妨害罪と同じだとされます。
手続の適正を図る目的のため、ここで対象とされるのは、破産管財人の適正、公正な職務。任務違背行為などは、管財人の職務でも除外されます。
破産者に対する面会強請の罪
破産者だけではなく、債権者を対象とした罪も規定されています。
破産法275条では、破産者に対する面会強請等の罪が規定されています。
破産者や、その親族などに、破産債権を弁済させ、または破産債権について、破産者の親族その他の者に保証させる目的で、面会を強請したり、強談威迫の行為をしたものは、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処するとされています。 併科ありです。
破産手続きをしたにもかかわらず、このような強請をされたのでは、破産手続は意味がないものになってしまうので、債権者側も規制しているものです。 家族への取り立てが事実上、破産者への強請になることも多いので、そちらも規制されています。
「親族その他の者」にどこまで含まれるかですが、破産者の心理状態、債権者の公平性の双方から考えなければならないとされています。友人、知人、会社の上司なども含まれる可能性があるとされています。
免責手続きの終了後にあっては、免責された債権に限るとされています。
非免責債権については、免責手続き終了後はこれに該当しないことになります。
手続き中は、これらの債権を含むとされます。
財団債権は対象外です。
破産手続きをしたのに、親族等に対する実力行為をしてしまうと、破産手続きの公平性が欠けてしまいます。
処罰対象となるのは、破産手続開始決定後の行為となります。
面会を強請というのは、威力や脅迫はもちろん、その程度に至らないものでも含まれます。
刑法105条の2の証人威迫罪と同じような規定です。
強談とは、言語をもって強く自分の要求に応じることを迫ることです。
また、威迫については、言語、動作、態度を持って気勢を示し、相手に不安・困惑の念を生じさせることをいいます。
面談だけではなく、電話による場合でもこれらに含まれます。
借金問題を解決しようと自己破産を進めたのに、刑事処分を受けては事態が悪化してしまいます。
くれぐれも破産法に違反しないよう、適正な自己破産を進めましょう。
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