退職金の4分の1基準
FAQ(よくある質問)
Q.退職金が4分の1に評価される場合とは?
自己破産の退職金4分の1についての話です。
自己破産手続は、裁判所に申し立てをして借金をゼロにしてもらう制度です。
そのかわりに、財産は持っていかれる、財産は売却されて、お金に換えられ、債権者への配当にあてられることになります。
財産について、少額のものは、残せることも多いです。
財産の中で、退職金をどう取り扱うかというのがよく問題になります。
退職金についても財産と評価されます。
退職金見込額の算出は?
これは、将来もらえる退職金額ではなく、今辞めたらいくら退職金が支給されるのか、というのが基準になります。
定年時にもらえるものではなく、今辞めたときの金額です。
定年まで働いたら1000万円、今辞めたら100万円という場合には、100万円を退職金見込額とします。
今やめたらいくらなのかという退職金見込額の書類を会社からもらったり、退職金規定から計算をして、自己破産の申し立て時には、退職金額を申告します。
退職金見込額の証明書を会社からもらうのは、なかなか難しい人も多く、退職金規定と給与明細等から見込額を算出して、報告書にまとめることも多いです。こちらの場合には、打ち合わせ時に退職金規定を確認して、計算に必要な要素が資料に載っているか詰めて行くことになります。
あまりにも複雑だったり、退職金規定の内容がおかしい場合には、計算ができないこともあります。
退職金見込額は8分の1と評価
この退職金見込額の評価ですが、神奈川県では原則として退職金の8分の1を財産とみなすことになっています。
800万円の退職金があるなら100万円、80万円なら10万円という評価をします。
=80万円
80万÷8=10万円
これをお金に換えて債権者に配当しなければならないという扱いになります。
ただし、8分の1にした後の金額が、20万円を下回り、他にも財産がないならば、少額のため換価しなくて良いという運用がされています。
自己破産では、車や保険、預貯金なども少額の場合には、解約の手間もかかってしまうことや最低限の生活維持のため残せる扱いとなっています。
仕事を失う?
この退職金見込額の8分の1は、実際には退職しなくても良いです。
自己破産をしたら退職をさせられて、仕事を失う、ということにはなりません。
ただ、どこかからか、このお金を準備して、配当に回す必要があります。
通常は、自己破産申立後に、少しずつ貯めます。
ボーナスがあれば、それを使うなどして、貯めていきます。
生活状況によっては、一部については、自由財産拡張の制度を利用して免除されることもあります。
この退職金見込額の積立により、破産手続きが長期化することも多いです。
退職金見込額はなぜ8分の1と評価するの?
この8分の1という根拠ですが、なぜ全額でなく8分の1で良いのかというと、4分の1は差押え禁止部分、さらに、退職金は将来確実にもらえるかどうか微妙な財産です。
いま、退職金の4分の1を破産手続で払ったのに、将来、会社が倒産したりして、もらえない可能性もあります。
そのような不確実性を理由に、2分の1に評価し、8分の1とされています。
このように、差押え禁止部分の4分の1よりも、さらに低くしているのは、将来の不確実性が根拠です。
支給時期が近い場合には4分の1に
そのため、近いところで退職金をもらう予定がある場合には、破産手続きで払わなければならない金額は、4分の1になります。
神奈川県を管轄する横浜地方裁判所で、明確な基準が決められているわけではないですが、近い将来に支給される見込みがある場合には、4分の1評価になります。
近い将来に退職金支給が予定されていて、現在の見込額が400万円の場合、100万円を支払う必要があるのです。
最近の事例では、破産決定から4ヶ月後に退職時期が来るケースで、4分の1の支払を命じられているケースがあります。
定年時期が近いような自己破産事件では、注意が必要でしょう。
定年前の自己破産では迅速な申立が有効となります。お急ぎの方は、経験豊富なジン法律事務所弁護士法人までご相談ください。