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ケース紹介90 Hさんの事例

40代 / 女性 / パート

借入の理由:ペット費用


海老名市にお住まいの40代女性のケースです。

銀行、クレディセゾンなどの信販会社に対し、約430万円の債務があり、アルバイトをかけもちしているものの支払ができないとの相談でした。

 

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.7.30

ペットのきっかけ

借金の理由を確認すると、主な理由はペットの費用とのことでした。複数のペットを飼っており、その費用を普段できるだけの収入がなく、債務を負ってしまったとのことです。

そもそも、ペットを飼うことになったきっかけを確認していくと、親が育てていた犬を引き取ったということでした。

親がペットを飼っている場合、高齢化や相続などで、子が引き受けるということは少なくありません。

きっかけはそのようなものでした。

 

ペット医療費

ペットについては、エサ代や消耗品の支出が増えるほか、高い医療費がかかることがあります。

エサ代くらいは覚悟している人がほとんどですが、医療費については予想以上という声もあり、これにより生活費が圧迫されることもあります。

今回も、引き受けた犬がアレルギーなどを発症し、病院代がかかるようになってしまいました。

その犬が亡くなるまでに病院代200万円程度を負担。

この負担で、それまでの蓄えがなくなりました。

ここまでの負担があったため、もうペットは飼わないつもりでした。

 

ペットロスで転職

ペットを失った後、さびしくなり、ペットロス状態になる人も多いでしょう。

飼わないという意思でいたものの、動物に触れる仕事をしたいと考え、ペットショップに転職。

以前より、収入が落ち込み、不安定となりました。

蓄えもなく、一時的に家賃更新料や生活費が不足した際に借入をし始めます。


ペットショップ以外に派遣の仕事も併用。

月収18万円程度は確保していたので、当初はそこから返済ができていました。

 

動物を引き取る

飼わないと決めたものの、徐々にペットが増える生活になってしまいます。

ペットショップで働く間に、売れない動物を自宅で引き取るようになったのです。

現場で働くことで、売れない動物がどうなるのか、その残酷さに耐えられず引き取ることに。


ハムスターや、鳥を引き取ったほか、捨て猫も引き取ってしまいます。

 

ペットの維持費が月に2万円かかりましたが、バイトかけもちで対応。

日常的にかかるお金は足りたものの、やはりペットの医療費が予想以上にかかり、借入をして補う生活になってしまいます。

 

ペット保険で補えず

ペット医療費の高額化は問題となり、アニコム損保などからペット保険も出ています。

しかし、人間の健康保険ほどフォローされているわけもなく、対象外や自己負担部分も多いです。

そもそも、保険に入れないペットもいます。

やはり、医療費は怖いです。

 

猫は突発的に病院に行くことが多く、入院もありました。


ペット保険に加入していたものの、月額15万円程度の自己負担も発生。

毎月の収入の大部分を占めることになります。

 

複数のバイト

さらに、勤務先のペットショップがブラック企業で、十分な支払いもされなかったことから、転職。収入が下がってしまいます。

返済を何とかしようと複数のバイトをかけもち。

このような働き方の場合、シフト調整がうまく行けば月収20万円程度になることもあるものの、シフト調整などで収入には波があり、借金は思うように減りませんでした。

その後も、猫の医療費がかかってしまい、借金は少しずつ増えてしまい、相談に来たという経緯です。

 

自己破産手続きとペット

ペットを飼っている人からすると、違和感でしかないのですが、法的にはペットは人間とは違う、動産という扱いとなります。

そうすると、理論的には、財産になるという考えもありえます。ローンで購入しているという人もいるでしょう。

ただ、実際には、飼っているなかで、購入価格以上で売却できるようなことはほぼなく、ペットを財産と考えての管財人選任や、強制的な処分という話は聞いたことがありません。

動物愛護に関する法律なども出てきており、単純な動産、資産とは異なる扱いがされるでしょう。

一応、購入したようなものであれば、その価格等を報告書に乗せることが多いです。

 

また、財産性以外に、浪費という観点でもフォローが必要でしょう。

ペットを飼うことが浪費といえるのかといえば、微妙なところではあります。家族と同じような捉え方をする人も多いかと思います。

ただ、収入に見合わないような購入の形態や、複数のペットを購入しているようなケースでは、 浪費になるのか、報告書でしっかり対応しておくほうが望ましいといえます。

 

反省文

浪費の程度がひどければ、免責調査型として管財事件になります。

ただ、本件では、浪費と言い切ってよいものか微妙です。

このようなケースでは、裁判所から反省文などの提出を求められ、管財人までは選任せずに、同時廃止による解決とすることもあります。

本件でも、管財費用の捻出が短期間にできるような事情もなく、費用面も考慮され、今後のペットに対する考え方、向き合い方などをしょめんで提出し、同時廃止により免責許可が出ています。

 

 

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