自己破産ケース
ケース紹介
ケース紹介250 Kさんの事例
70代 /男性 / アルバイト
借入の理由:保証
伊勢原市にお住まいの70代男性からの自己破産相談でした。
以前に経営していた法人を破産させる際、保証人となっていたためあわせて自己破産をするという事例でした。
ただ、実家の不動産を相続しており共有不動産となっていたため、そちらの問題がありました。
今回は、自己破産と共有不動産の扱いについて解説します。
この記事は、
- 自己破産を検討中、共有不動産あり
- 不動産の共有者が自己破産する
という人に役立つ内容です。
不動産所有者の自己破産
自己破産では、簡単な手続きである同時廃止と、破産管財人が選ばれる管財事件に分かれます。破産管財人が選ばれる場合には、少なくとも20万円以上の予納金が必要になります。
自己破産を申し立てる際、不動産を所有している場合は原則として「管財事件」として扱われます。
これは、裁判所が破産管財人を選任し、債務者の財産を管理・処分する手続きです。
ただし、不動産を所有していても、一定の場合には「同時廃止」として扱われる可能性があります。
・オーバーローンの状態(被担保債権の残債が不動産の評価額を大きく上回る場合)
・明らかに売却困難な不動産(過疎地の土地など)
このあたりは、裁判所の運用にばらつきがあります。
神奈川県では、以前は、不動産価格の1.2倍以上の住宅ローン等があるかが基準とされていましたが、その後、1.5倍以上の基準とされました。
不動産が3000万円と評価される場合、住宅ローンなどの抵当権の債権額が1.5倍である4500万円を超えているのであれば、あまりはないだろうとして、財産とは取り扱わないものとしているのです。
2つめの、・明らかに売却困難な不動産(過疎地の土地など)については、原則として売却困難かの判断のため破産管財人を選ぶことがほとんどでしょう。
管財事件での不動産の扱い
管財事件となった場合、破産管財人が不動産の売却を試みます。
不動産が担保に入っている場合でも、担保権者が競売による処分を希望しない限り、破産管財人が不動産を処分するのが一般的です。
抵当権が設定されている場合には、金融機関から競売の申立が並行して進められることもあります。
破産管財人が、最終的に任意売却できなかった場合は「財団から放棄」として、破産手続きでは処分されないこともあります。抵当権者がいて競売が進められている場合には、破産手続きとは別に競売手続きで新しい所有者が決まることになります。
これに対し、抵当権者もいない不動産が財団から放棄された場合には、債務者の手元に戻ることになります。無価値と判断された不動産は残るのです。原野等で、このような処理がされることは少なくありません。
不動産と個人再生
自己破産とは別の個人再生での不動産の取り扱いも確認しておきます。
個人再生は、財産を手放すことなく、借金の減額と分割返済によって生活再建を図る手続きです。
住宅ローンが残っている自宅不動産の場合、「住宅資金特別条項」を利用することで、住宅ローンを支払いながら自宅を手放すことなく再生手続きを進めることができます。
ただし、個人再生では、不動産の価値が「清算価値」として計算され、最低弁済額に影響を与えます。不動産の評価が高ければ、それに応じて弁済額が増加する可能性があります。オーバーローンであれば無価値と評価されますが、査定価格が高い場合には注意が必要です。
売却が難しい不動産の特徴
一般的に任意売却が難しい不動産には、以下のようなものがあります。
- 共有持分権の不動産
- 農地
- 過疎地域の不動産
自己破産と共有不動産
共有持分しかなくても、不動産を一部所有しているとされますので、財産にはなります。破産管財人は選ばれるのが通常です。
共有不動産の売却については、共有者全員の同意が得られれば、任意売却が可能です。市場価格に近い価格で売却できるため、共有者にとってもメリットがあります。
破産管財人がついた場合、通常は共有者と連絡を取り、全体の不動産を売却しようと試みます。
全体の不動産を売却するか、または、他の共有者(特に親族)が購入する可能性を確認します。共有持分権であれば、売買価格の融通が効くことも多いです。
共有者の協力が得られない場合、理論上は、共有不動産の持分だけを第三者に売却することも可能です。ただし、持分のみの売却は買い手が見つかりにくいです。
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また、共有持分だけを第三者に売却すると、元の共有者と第三者が共有することになり、トラブルになる可能性が出てきます。賃貸物件であれば家賃の請求や、不動産の管理方法について意見が対立するなど、さまざまなトラブルが発生するリスクが高まります。共有者からすれば、たとえ自分の持分が守られても、新しい共有者とのコミュニケーションが発生することになります。
共有持分を処分できない場合
破産管財人が共有不動産の持分を処分できない場合、一般的な共有者の対応としては、次のような方法があります。
まずは、共有物分割請求です。
破産管財人は、共有持分の任意売却が困難な場合に、裁判所を通じて共有物分割請求を行うことがあります。
これにより、裁判所が不動産の分割方法を決定し、物理的に分割するか、価格賠償(代償分割)や換価分割を行うことができます。共有物分割訴訟は、一般的に時間がかかり、破産手続きとしては望ましくないのですが、一定の価値がある不動産で、共有者の協力が得られず、共有持分のみでの処分が難しい場合には、訴訟を提起することもあるでしょう。
処分ができないと判断された場合、破産財団からの放棄もありえます。
破産管財人が持分を処分できず、管理や売却にかかるコストが利益を上回る場合、破産財団からその持分を放棄することがあります。放棄された持分は破産者に戻ります。破産手続きでは処分されないことになります。
不動産の財団からの放棄では、破産管財人だけでは進められず、裁判所の許可が必要となります。
共有者の自己破産による他の共有者への影響
自己破産した共有者がいた場合、他の共有者にはどのような影響があるのでしょうか。
まず、破産者の共有持分が処分されても、他の共有者の持分は処分の対象とはなりません。破産者の持分のみが影響を受けるため、他の共有者はその点で安心できます。
ただし、破産者の共有持分が処分された結果、第三者がその持分を取得し、新たな共有者となる可能性があります。この場合、共有不動産を処分する際に第三者の同意が必要となるため、トラブルが生じることがあります。
破産者の共有持分は、一般市場で売却されにくいことが多く、破産管財人は、他の共有者に持分の買い取りを求めることがあります。買い取りに応じるかどうかは自由ですが、破産管財人の連絡に対応する必要があります。
破産管財人との話し合いがまとまらない場合、共有物分割請求訴訟が提起されることがあります。この訴訟により、共有者全員が裁判に参加しなければならず、時間や手間がかかる可能性があります。
共有者の立場から、第三者との共有を避けたいと考える場合、何らかの対応をする必要があります。
まず、第三者との共有を避けるためには、破産者の共有持分を買い取る方法があります。買い取りには相応の資金が必要ですが、破産手続きには、早期に進めるというニーズもあるため、共有物分割請求などの訴訟での価格よりは低い金額でも買取ができることが多いです。
次に、共有不動産全体を任意売却する方法もあります。共有不動産を維持する意向がない場合、この方法が最も適しているといえるでしょう。
共有持分の自己破産事例
共有不動産の多くは、相続不動産でしょう。
相続が発生した際に、親や兄弟姉妹と相続財産の不動産を共有しているという事例です。
このような人が、自己破産をする場合にも、共有持分の処分が問題になります。
今回の事例では、神奈川県にお住まいの男性が、実家である新潟県にある共有不動産をどうするかが問われました。
相続により兄弟と2分の1ずつ共有しているというものでした。居住者もおらず、空き家問題もあるため、定期的に戻り管理は一応しているという状態でした。
破産申立前に、査定を取るも、売却困難という回答がされました。本人は高齢で他に資産がありませんでした。共有者による買い取りの意思もありませんでした。
他の事情により、破産管財人は選任されたため、面談を実施。
その際、破産管財人からは、共有者による買取の意向確認、または、破産者による一定額での買取の意向確認がありました。しかし、結果として、どちらにも対応できませんでした。
最終的に、破産管財人も売却不能と判断し、破産財団から放棄する扱いがされました。
これにより、共有持分は破産者に残る形となっています。
地方の共有不動産について、簡単に処分できないものとして残せると断言はできませんが、個別事情によっては、このように残ることもありますので、参考にしてみてください。
また、原野などの不動産の場合、維持費をなくしたいため、破産手続きで処分を希望する人もいますが、価値がない不動産の場合には、破産手続き後も残る可能性はありますので、頭に入れておきましょう。
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