自己破産ケース
ケース紹介
ケース紹介236 Mさんの事例
30代 /男性 / 会社員
借入の理由:事業資金、損害賠償債務
横浜市南区在住の会社員、30代男性からの相談でした。
11名に対して2300万円の債務があり、支払ができないとの相談でした。刑事事件により服役、出所後に相談があったという事例です。
このように出所後に債務整理の相談を受けることもあります。そこで、今回は服役と借金問題について整理しておきます。
この記事は、
- 借金問題があるものの刑務所に行くことになった
- 懲役刑から出所して借金を整理したい
という人に役立つ内容です。
刑務所への服役と借金問題
刑事事件を起こして実刑判決を受け、刑務所に服役している間に借金問題が判明することもあります。
同居親族などからの相談が多いです。
服役している以上、一般的には返済が続けられなくなります。しかし、借金の返済は、刑務所に服役している間も免除されることはなく、続ける義務はあります。これは、借金が個人の責任であり、その責任は刑務所に入っても消えるわけではないからです。
債務者本人としては、刑事事件により、借金問題の解決どころではなくなり、解決できないまま判決を受けたという事情も多いです。
刑務所に服役中の借金返済
法的には、借金の返済は刑務所に服役している間も続ける義務があります。しかし、実際には服役中に返済を続けることは困難でしょう。
借金の返済が滞ると、債権者からの督促が登録住所にされます。督促状も無視していると、裁判手続きが取られることも多いです。裁判所の判決が出ると、財産の差し押さえもできるようになります。
刑務所に服役中の家族の負担
刑務所に服役中の人が借金を抱えている場合、その返済負担はしばしば家族に降りかかります。
これは、登録住所に督促がされるためです。家族にとって大きな精神的ストレスとなることも多いでしょう。
親などの家族が、代わりに返済負担を引き受け、事実上、本人名義で返済を続けることもあります。
しかし、法的には家族というだけでは支払義務はありません。
服役した債務者本人と相談し、事情を債権者に伝え、郵便物の受け取りを拒否することなども選択肢になりえます。
刑務所に服役中の不動産任意売却
刑務所に服役中の人が不動産を所有し住宅ローンを払えなくなった場合、その不動産を売却することで借金問題を解決することも考えられます。
しかし、服役中に不動産を売却するには、かなり大変です。借金を家族が代わりに支払うよりもハードルは高いです。
まず、不動産の売却は、所有者本人の意思によらなければなりません。
そのため、服役者本人との面会を通じて売却の意思を確認する必要があります。また、売却には印鑑証明書や登記用の委任状など必要書類を準備しなければなりません。
理論的に対応はできなくはないものの、対応してくれる専門家や買い主がいるかどうかが現実には問題となります。
刑務所から出所後の借金問題
借金問題を解決せずに服役した場合、刑務所から出所した後も、借金問題は残ります。
そのため、出所後は借金問題を解決する必要があります。
特に、登録住所での郵便を受け取らない扱いにしていた場合、住所不明での公示送達による裁判を起こされていたり、債権譲渡がされているなど、現在の状況がわからないことがほとんどです。
その場合、服役前の借金状況や、最新の信用情報機関からの情報で、現在の状況を調査する必要があるでしょう。
債務整理などを専門家に依頼する場合には、以前の借金状況が分かれば、そこから調査することはできます。
漏れがあるか心配な場合には、信用情報機関への照会も併用した方が良いでしょう。
また、再び借金問題に陥らないための生活習慣の見直しも必要です。
まずは、収入を得るよう職探しをしたうえで、収入の範囲内で生活できるよう家計収支を立てる必要があります。
服役と消滅時効
刑務所に服役している間も、債務に対する消滅時効は進行します。
これは、消費者金融やクレジット会社等からの借金についても同様で、最後に取引(返済または貸付)が行われてからだいたい5年が経過すれば、その債務は時効援用により消滅します。これは、刑務所に服役している間であっても変わりません。
しかし、ここで注意すべき点が一つあります。
それは、債権者からの消滅時効を止める手続きがされていると、消滅時効は完成しないということです。服役の場合には、民事裁判が起こされているかどうかがポイントになるでしょう。
また、5年経過後に任意で再び支払ってしまった場合も時効の主張はできなくなるのが原則です。出所後に督促を受けた場合には、安易に支払うことはせずに、情報収集をしましょう。
服役中の自己破産
刑務所に服役している間に自己破産を申し立てることも可能ではあります。
しかし、これにはいくつかの制約があります。
まず、自己破産を申し立てるためには、本人の意思確認が必要となります。これは、刑務所に服役している本人に直接会って確認する必要があります。服役中となれば、代理人による申立が必要かと思いますが、代理人が本人の意思確認をしなければならず、出張費等が余計にかかるでしょう。
また、自己破産を申し立てるための必要書類を揃えることも困難であり、これには家族などの協力者の存在が重要となります。
このような制約があるため、刑務所に服役している間に自己破産を申し立てることは容易ではありません。一般的にも、自己破産のタイミングとして、服役中に自己破産の申立をすることは多くなく、出所後に生活を立て直した上で自己破産をすることの方が多いです。
出所後の自己破産事例
出所後に自己破産の申立をした事例があります。
もともと、コンビニ店員として就職。後には、店長として店舗を任されるようになりました。
その後、コンビニオーナーとして独立開業。
オープンのための費用はフランチャイズ本部が立替え、10年間の分割で払うことになっていました。
しかし、経営がうまくいかず、運転資金のため、借入れをするようになりました。
コンビニ経営の厳しい要因でもある人手不足を補うため、人材派遣会社と契約。これにより人員確保は容易になったものの、派遣の人件費は倍程度であり、経営を圧迫。
結局、本部からの話もあり、コンビニ経営から撤退。借金が残りました。
借入により、違約金を支払うなどもしていました。
刑事事件により服役
そのようななか、事情もあり、犯罪行為に及んでしまいます。すぐに犯行は発覚し、逮捕されました。被害者がいる事件でしたが、示談や被害弁償はできませんでした。
懲役の実刑判決を受け、確定、服役することに。
服役前の保釈中には自己破産申立を弁護士へ依頼していましたが、実刑判決で服役することになり、刑事事件の話が伝わっておらず、連絡不能という理由で辞任されてしまいました。
服役後、仮釈放となりました。これにより手続のため動けるようになったため、借金を整理しようと自己破産申立の相談に来ました。
調査の結果、債権者からは裁判を起こされていることもわかりました。
SMBCコンシューマーファイナンスや、ビジネクスト株式会社が裁判に動いていました。
非免責債権
犯罪行為の被害者への賠償金などは、自己破産でも非免責債権とされる可能性が高いものです。
傷害事件などの場合には、生命・身体の損害賠償請求権が非免責債権となり、支払い義務が残ります。
財産犯の場合には、悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償債務になるかどうかがポイントになります。
個人の債権者
事件の被害者宛には個人債権者ということで特別の文書を送っています。
通常の貸金業者のような通知を送ると、相手にも混乱を与えてしまいますし、破産手続きが問題になりやすいので特別の配慮が必要といえるでしょう。
同時廃止により免責許可
本件においては事業資金であることや、刑事事件の被害者がいたことから、手続きとしては破産管財人が選ばれてもおかしくなかったのですが、裁判所の判断で、破産管財人は選ばずに同時廃止手続きで免責許可が出ております。
損害賠償債務については、非免責債権の問題がありますが、他の債務については免責許可の確定によって支払い義務はなくなっています。
服役、出所後の借金相談、自己破産事件も多く相談があります。ご相談は無料で受け付けています。
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