自己破産ケース
ケース紹介
ケース紹介233 Sさんの事例
40代 /男性 / 会社員
借入の理由:保証人
厚木市にお住まいの40代男性からの相談でした。
もともと法人の代表者で、法人破産と個人の自己破産を弁護士に依頼していたところ、その弁護士が死亡してしまったということで、相談に来ました。
今回は、弁護士との委任契約と、弁護士が死亡した場合の対応について解説します。
この記事は、
- 依頼していた弁護士が死亡した
- 法人代表者の自己破産の注意点を知りたい
という人に役立つ内容です。
委任契約と死亡
民法653条は、「委任者又は受任者の死亡」を委任の終了事由として挙げています。
これにより、委任契約は当事者のいずれかが死亡した場合にはその時点で終了することになっています。
委任契約は、当事者間の信頼関係に基づいて成立します。
そのため、委任者と受任者との間に信頼関係があったとしても、その相続人との間に信頼関係があるとは限りません。このため、委任者が死亡した場合、その信頼関係が終了し、委任契約も終了することを前提にしているのです。
なお、この規定は任意規定であり、当事者の合意によりその適用を排除することが可能です。委任者が死亡した後も何かをするように依頼する内容の委任契約を締結することは可能です。
この場合、委任者の死亡により委任契約が終了するという規定を排除する特約が黙示的に付されると解されます。
死後事務委任契約などは、この理論構成です。
弁護士の死亡と委任契約
弁護士が死亡した場合、その扱っていた委任契約はどうなるのでしょうか。この問題は、弁護士が扱う契約の性質と、弁護士とクライアントとの間の信頼関係に密接に関連しています。
一般的に、弁護士が死亡した場合、その扱っていた委任契約は終了すると考えられます。
これは、委任契約が当事者間の信頼関係に基づいて成立するため、その信頼関係が終了した場合、委任契約も終了するという原則に基づいています。
実際に依頼していた弁護士が死亡した場合に、どのような取り扱いになるかというと、まず、委任契約の当事者が誰かを最初にチェックしましょう。
弁護士が複数所属する事務所に依頼した場合、委任契約は、代表弁護士や弁護士法人との間で締結していることも多いです。また、弁護士側が複数の弁護士を当事者にしていることもあります。
依頼した弁護士が死亡したという場合でも、担当していた弁護士が死亡しただけで、契約当事者の弁護士が死亡したのでなければ、委任契約は有効のままです。その場合は、担当が変わり、違う弁護士が担当につくことになるでしょう。
契約当事者の弁護士の死亡
これに対して、契約当事者の弁護士が死亡した場合、委任契約は終了します。
ただ、複数の弁護士が所属しているなどの事務所で代表者弁護士が死亡したような場合には、通常は、その事務所の他の弁護士により事件の引き継ぎなどがされます。
引き継ぎについて、事務所の弁護士から連絡があれば、条件等を聞き、合意できる場合には、新しい委任契約を結ぶことになります。
ただ、弁護士事務所に引き継ぐ弁護士がいなかったり、事務所が閉鎖や弁護士法人が倒産してしまうこともあります。
このような場合、委任契約について引き継ぎの連絡がないことが多いですが、大規模な事務所がこのような事態になってしまった場合、任意の弁護団などのグループが結成され、引き継ぎ処理をしたり、ときには弁護士会が動くこともあります。弁護士会で相談窓口を開くこともありますので、気になる場合には、所属している弁護士会を調べて連絡して確認してみると良いでしょう。
そのような動きすらない場合には、委任契約が終了したため、自分で新しい弁護士を探すなどの対応をする必要があります。事件が裁判所に係属している場合には、裁判所に連絡して、事実上、進行を待ってもらいつつ、それまでのやりとりの記録を整備する必要があります。死亡した弁護士の相続人などから引き継げればベストですが、難しい場合には、裁判所での記録を謄写するなどして対応するしかないこともあります。
弁護士が1名の個人事務所では、このようなリスクがあります。また、広告業者に汚染された弁護士法人などでも、このような混乱する事態になってしまうこともあります。
弁護士死亡後の自己破産事例
今回の事件も、以前に依頼していた弁護士が亡くなってしまったということで、後任の弁護士を探しているとのことでした。
弁護士1名での法律事務所だったため、全くのゼロから弁護士を探しているとのこと。
以前と変わらず自己破産を希望するとのことでした。
このような場合、最初の受任通知により支払い停止から長期間が経っているため、債権者からの訴訟リスクが通常よりも高まります。
裁判を起こされた場合の対応や、速やかな準備、申立が必要になります。
とはいえ、前弁護士が死亡していると、十分な引き継ぎがされず、ゼロからの準備ということがほとんどです。
自己破産の経緯
もともとは、労金経由でクレジットカードを作成し、ETC等に利用していました。
その後、法人を設立しています。クレジットカードは日用品の購入等に使用するようになっていました。
法人が日本政策金融公庫、銀行から運転資金の借入れをした際、連帯保証人となりました。
借入金は車両の購入や設備投資に使用したとのこと。
法人の債務の担保として、自宅に根抵当権を設定。
その他、リースの保証人にもなっています。
法人の売掛金回収ができず、弁護士に法人破産・代表者の自己破産を依頼しました。その後、破産申立てに至らず時間が経過。
自宅が競売にかかります。
依頼していた弁護士が死亡。相談者宛てに直接督促状が届くようになりました。
かなりの期間が経っていたものの、弁護士に依頼中に、裁判所の支払督促の申立てがされていたことが判明し、消滅時効の援用はできない状態でした。
本来は、法人破産もすべきでしたが、再度、予納金を準備することができず、費用面から断念。個人の自己破産のみ進める方針となりました。
裁判所の基本スタンスは、法人代表者であれば、法人破産も同時に申し立てるべきというものですが、事情もあり、本件では、代表者のみの自己破産を進めることになり、免責許可も出たことで解決となっています。
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