自己破産ケース
ケース紹介
ケース紹介230 Hさんの事例
30代 /男性 / 会社員
借入の理由:オンラインカジノ
大和市にお住まいの30代男性からの相談でした。
オンラインカジノや他のギャンブルで借金を負ってしまい自己破産を希望しているとの相談でした。管財事件になる確率の方が高そうな事件でしたが、同時廃止で進められました。
今回は同時廃止の場合の裁判官面接である審尋について合わせて解説します。
この記事は、
- オンラインカジノで多額の借金をしてしまった
- 自己破産での裁判官面接について知りたい
という人に役立つ内容です。
破産審尋とは
破産審尋とは、自己破産手続きを開始するかどうかを判断するために裁判所が実施する、裁判官と申立人との面接です。審尋という言葉は裁判官との面接だと考えれば良いでしょう。
主に破産の理由や資産・借金返済状況について質問が行われます。
運用は地域によって違います。
実施される場合でも、一般的には10分ほどで終わります。
また、弁護士が代理人である場合、特別な事情がない限りは破産審尋が行われない裁判所も多いです。実施する場合も、その趣旨としては、同時廃止で進めるか管財事件にするかの判断のためということも多いです。
神奈川県内では、原則として破産審尋は行わず、書面で進められています。例外として、破産決定を出すかどうかを裁判所が悩むような事案では、個別に破産審尋が実施されています。
破産審尋で聞かれる内容
破産審尋の裁判官面接では、裁判官から借金の内容や借入原因など、自己破産を申立てるしかなかった経緯、資産の内容や金額、そして免責不許可事由が疑われる事情があればその詳細について質問があります。
この破産審尋では、裁判官に自己破産手続きを管財事件にし、免責不許可事由や資産の調査が必要だと疑われないように注意しなければなりません。
自己破産の申立てに至った経緯や自分の資産については、正直に隠さず伝えることが第一です。下手に事情を隠して、説明が矛盾して怪しくなってしまえば、調査のために管財事件にされてしまいかねません。
免責審尋とは
免責審尋とは、破産者に対して免責許可を出すべきかどうかを裁判所が判断するために行われる面接です。
破産手続開始決定を出したあとの、免責許可決定を出すかどうか、2段階目の手続です。
免責審尋も必ずしも行われるわけではなく、省略されることもあります。こちらの運用も裁判所の地域によって異なります。また、運営方法も裁判所で変わっています。以前には、神奈川県の横浜地方裁判所では、破産者を一室に集めて集団で面接することもありました。
集団免責審尋のやり方の一つには、破産手続開始決定を受けた複数の人を集め、裁判官が説明・説諭をしたうえで一人ひとりに対して順番に質問をしていくという方法をとることもあります。
2023年の神奈川県内の運用では、免責審尋は原則として行われていないものの、問題がある事案でのみ個別に実施というものが中心です。
免責審尋が実施される場合、破産者の出席は必須です。
免責審尋では、破産に至る経緯のほか、免責不許可事由がある場合には、その聞き取りが中心です。
書類に記載された内容について確認が行われることが多く、個別審尋でも大抵の場合10~15分で終わります。受け答えが十分でない場合には20分程度かかっている事件も見かけました。
免責審尋の内容と所要時間
免責審尋は、免責不許可事由や裁量免責の調査のために行われる面接です。
地域の運用によって異なりますが、集団面接でなく、個別面接の場合には、個室でおこなわれます。
破産者本人が出席し、裁判官や代理人弁護士とともに行われます。
面接では、支払不能の原因や現在の生活状況などについて質問が行われます。通常は長くても15分程度で終わります。
なお、破産管財人が選ばれる管財事件では、免責審尋と同時に行われる債権者集会があります。
こちらでは、債権者も出席できます。貸金業者などは出席しないことが多いですが、関係者が債権者でいる場合には出席してくることもあります。
債権者集会は、主に破産管財人からの報告なので、これも10~15分程度で終了します。
面接をする裁判所と服装
免責審尋などの裁判官面接が実施される場合、どの裁判所までいかなければならないのでしょうか。
自己破産を申し立てた裁判所で面接は実施されます。
自己破産の申立は、申立人の所在地を管轄する地方裁判所で行われます。
そのため、通常は、自分の住所を管轄する地方裁判所と考えて良いでしょう。
神奈川県内では各支部があるため、厚木市や伊勢原市にお住まいの人は横浜地方裁判所小田原支部、座間市や相模原市だと横浜地方裁判所相模原支部、海老名市や大和市だと横浜地方裁判所が管轄となります。
面接時の服装については、特別な指定はありません。ただ、一般的な常識を持った社会人としての服装が望ましいでしょう。
特に、原則として免責審尋がない運用なのに、個別事情から実施される場合には、裁判所から問題視されていることを意識しておきましょう。
裁量免責の許可をもらうために、反省の意を示すことが重要なので、派手や非常識な服装は避けましょう。しかし、スーツが必須というわけではなく、普段着でも問題ありません。ジーパンやスニーカーでも大丈夫です。
正直な話、派手な服だからといって免責不許可という話にはならないでしょうが、裁判官に悪い印象を持たれれば、それだけ質問が厳しくなることもありえますので、地味な服装にしておいたほうが無難です。
免責審尋での態度
ギャンブルや浪費などの免責不許可事由に当たる問題行動をしてしまっていたとしても、事実をそのまま説明し、更生していることを印象付けましょう。
また、他人から借りたお金を帳消しにすることについての反省などを示すのが有効です。
自己破産の手続きで最も緊張するのが、このような裁判所での面接でしょう。
破産管財人による面接もありますが、裁判官との面接のほうが緊張したという声が多いです。
免責とは
免責審尋は、免責を許可してよいか判断するための面接です。
「免責」とは、負債の責任を免除する、返済義務を免除するという意味です。つまり、借金をチャラにしてもらえる制度が免責なのです。
免責審尋は、裁判所が、債務者を免責させてよいかどうかを判断するため、債務者本人から事情を聞くという手続きになります。
集団免責審尋で聞かれること
個別の免責審尋では込み入った内容を聞かれるのが通常です。
これに対して、集団での免責審尋が実施される場合にはプライバシーに配慮されされます。
一般的には、免責についての理解を問う質問のみで、個別の事情を尋ねられることは少ないです。
「住所、氏名に間違いはないか」、「申し立て内容に間違いはないか」、「弁護士に嘘をついたりしていないか」「免責不許可事由はないか」といった質問がされます。
問題なければ「はい」と答えれば大丈夫です。
集団面接の場合には、他の人の待ち時間があるため、過去には、30分から1時間かかることもありました。
横浜地方裁判所での自己破産面接
2023年時点で、横浜地方裁判所では、自己破産手続きにおいて裁判官面接が予定されていません。
以前は弁護士による個別面接や免責審尋の際の集団面接が行われていましたが、新型コロナウイルス以降、原則としてこれらの面接・審尋は停止されています。
そのため、特に問題がない自己破産の申立て事件では横浜地方裁判所に行かずに手続きが進められています。
ただし、免責不許可自由があるなど問題がある事案の場合には、以前よりも破産管財人が選任されやすく、管財人による免責調査を中心に進められる運用となったと感じています。
同時廃止での免責審尋
破産管財事件にはならない事件、つまり、免責調査までは必要がないが、裁判官面接が必要だという事件に分類されることもあります。
この場合、同時廃止で進めるものの、個別に免責審尋をするということもあります。
2023年時点で、横浜地方裁判所で個別免責審尋が実施された事例があります。
横浜地方裁判所での免責審尋内容
免責審尋で裁判官から聞かれることは事案によって異なります。
免責不許可事由があって裁判官面接が実施される場合には、その免責不許可事由の内容、程度、反省度合い、現在の状況、対策などが聞かれることが多いでしょう。
しかし、担当裁判官によって違っているので、あらかじめ質問事項がわかるわけではありません。
審尋にかかる時間も裁判官によって異なり、早ければ数分、長くても10分程度というイメージがあります。
横浜地方裁判所での免責審尋事例
ここで横浜地方裁判所で同時廃止での個別免責審尋がされた事例を紹介します。他の事例で管財事件になってもおかしくないと感じる内容でしたが、担当裁判官により個別免責審尋で進めると判断されたケースです。
借入の経緯はオンラインカジノでした。
もともとは、収入の範囲で生活をしていました。
数年前に、初めてオンラインカジノをやりました。
Youtubeを見ていたところ、動画で儲かるという話だったので、試しにやってみましたが、負けてしまいました。
10万円程度の損失になってしまい、収入だけでは生活ができず、アコムから借金をして生活費にあてました。
その後は、カジノは止めて、収入から少しずつ返済し、アコムの借金は一度完済しました。
しかし、新型コロナウイルスの蔓延で外を出歩けなくなり、収入も下がったので、オンラインカジノを再利用するように。
最初は勝てていたのですが、徐々に負けるようになり、生活費が不足し、アコムで再度、借金をするようになってしまいました。
以前とは違い、一度、勝った味を忘れられず、もう少しお金を賭ければ、また勝つことができ、借金も返せると思いこんでしまい、借金をして、カジノに使うようになってしまいました。
翌年には、1年で約120万円程度の損失を出してしまいました。
その後、そのサイトにはログインができなくなり、他のオンラインカジノサイトを利用するようになりました。
別の消費者金融からも借り入れをし、カジノの資金や不足した生活費に充てました。
さらに、ペイディで後払いサービスを利用して買ったiPhoneを売却して資金や不足した生活費、返済資金に充てるなど換金行為もみられました。
新型コロナウイルスで仕事が減り、収入の減少もありました。
さらには、別のギャンブルなら儲かるかと思って、バイナリーオプション、競馬や競輪にも手をだすようになりました。バイナリーオプションでは数十万円の損失、競馬等はそこまでではないものの、競輪では大きく負けてしまい、借金が膨らんでしまいました。
直近では、オンラインカジノは、負けてはいないものの、主に競輪など、他のギャンブルで大きく負けてしまい、返済できないと考えるようになって、もうギャンブルを止めたいと考え、弁護士に依頼すれば、それを機に止められると思い、相談し、自己破産の依頼をしに来たとのことです。
実際に、依頼後は、きっぱりとギャンブルを止めることができていました。
自分を変えたくて、借金ができない状態に追い込む人も多いです。止めたいのですが、きっかけが必要という人ですね。
オンラインカジノの反省
今回のケースでは、担当裁判官から聞かれた内容はオンラインカジノによる自己破産を行った経緯の再説明、その時の心情、および今後の対策が中心でした。
今後の対策としては、原因となったきっかけに対する対策があるかどうかという点が注目されました。
オンラインカジノに手を出してしまったようなケースでは、そのような時間を別の健全な趣味に充てることが良いという考え方があります。
具体的に、そのような趣味があるのか、また新しい時間の使い方について説明を求められました。
悪習慣をなくすには、これに置き換えられる代替行動を見つけるのが有効とされます。これと同じ発想でしょう。
自分の意志より第三者
さらに、自分の意思でギャンブルをやらないという決意だけでは説得力がない場合、第三者による抑止ができないかということも裁判官が検討します。
今回のケースでは、一人暮らしで職場もリモートになりがちだったため、誰か相談相手がいると良いというアドバイスがされました。
家族や友人、職場の同僚など、話しやすい相手がいるとギャンブルに歯止めがかかるという考え方があるため、生活の改善が期待できると裁判官も判断するでしょう。
実際には、職場の同僚などから誘われてギャンブルを始めてしまう人もいますが、誰も相談相手がいない状況で自分だけで止めようとするのは説得力が低くなってしまいます。
免責審尋にかかった時間
今回の横浜地方裁判所の裁判官面接は約10分程度の時間で行われました。
30分の枠に2名の予定があり、もう1名の人は20分近くかかっていました。
受け答えによって変わるといえるでしょう。
免責審尋後の感想
面接後の感想でも、裁判官の言葉は心に響き、今後カジノのようなギャンブル行為を控えるという強い決意が伝わってきました。
このような裁判官面接を通じて、自己破産者が今後の生活を改善し、再び同じ過ちを犯さないようにすることが期待されます。
ペイディの債務整理
なお、ペイディからの引き上げ要求もされました。ペイディは、受任通知によって支払を止めた場合、未払いの商品代金があると、商品の所有権留保を主張し、引き上げの請求をしてきます。弁護士がつくことも多いです。未払金の任意整理をしようとしても、まず商品の引き上げや、換金部分の一括精算がないと和解できないことも多いです。
今回のように自己破産などでは換金の報告をして、免責許可が出れば問題になりにくいですが、任意整理での解決は極めて難しい会社となります。
本件では、しっかり報告もしていたので、この点を裁判所からは問題視されませんでした。裁量免責の許可も出ています。
オンラインカジノ等を理由とした自己破産事件も多く相談があります。ご相談は無料で受け付けています。
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