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ケース紹介227 Iさんの事例

50代 /男性 / 会社員

借入の理由:副業詐欺、情報商材、転職


厚木市にお住まいの50代男性からの相談でした。

副業商法、情報商材を理由に多額の借金を負ってしまい、転職による収入減少もあり支払いができないという相談でした。

この記事は、

  • 副業詐欺・情報商材の費用に苦しんでいる
  • 借金が払えず自己破産をしたい

という人に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2023.4.17

 

副業詐欺とは?

副業詐欺とは、副業を始めようと考えている方をターゲットに、お金を支払わせる詐欺。

ただし、法的に詐欺といえるか微妙な商法も多く、被害に遭っても返金できないことも多いです。

多くの場合、代金の対象は情報であり、それが価値を持つかどうか明確に評価できないため、微妙だと言われるものです。勧誘時に必ず稼げるなどの断定的な内容があればともかく、多くの業者は、そのような表現を微妙にかわし、違法ではないが、高すぎる代金を請求しています。

そのため、返金の請求をしても、法的な理屈をつけて応じないことが多いです。

また、詐欺だと認定されそうな商法の場合、業者が一定期間ごとに逃げてしまい、裁判では勝てても、相手が不在という状態で、結局、回収できないということもあります。

 

副業詐欺の種類

副業詐欺には様々な種類がありますが、代表的なものには情報商材、セミナー等の会費、会員費用、研修費用、ツール代金等で支払を求めることが多いです。以前は、高額な商品や教材(DVDなど)を買わせる手法でしたが、最近は、デジタルデータが増えています。

また、チャットレディなど、一定の仕事をすることで高収入が得られるという嘘をついて、登録料や月額料金を騙し取る詐欺もあります。

 

副業詐欺に遭わないための見分け方

副業詐欺に遭わないためには、以下のようなチェックポイントを参考にしてください。

勧誘文句が簡単・高収入・自由・確実などの言葉。
具体的な仕事内容や報酬体系が明確に説明されていない。
登録料や保証金など前払いのお金が必要。
口コミや評判が自作自演。
運営者や連絡先が明記されていない、架空。


「月収100万円以上稼げる」「チャットだけで時給3000円以上」などの勧誘文句は怪しいです。

 

副業詐欺に騙されたらどうする?

副業詐欺に騙されたら、まずは被害の拡大を防ぐために連絡を断ち切ることが重要です。

怖いのは、追加被害です。業者によっては、返金するために、さらに費用が必要などと言って追加請求を求めてきます。たとえば、10万円を払えば、それを含めて110万円を返金するなどと言い、追加で10万円を払わせる手法です。10万円を払ったら逃げられることがほとんどです。追加被害をまずは避けるようにしましょう。今まで騙された業者を「110万円戻ってくる」などと信じてはいけません。

次に、返金や解約の交渉を行うか、どのように行うか考えます。

とりあえず無料の消費生活センター等に相談し、理論的に法的な主張ができる事案か、また、その業者に対する類似相談が多くないかなどの情報を整理するのは有効でしょう。

警察に相談に行くことも一つの選択肢ですが、詐欺か微妙な事案では動きは遅いです。すでに複数の被害届が出されているような事案では、警察が動いてくれることもありますが、基本的に警察は刑事事件にするための動きをしますので、返金確率が上がるわけではありません。警察が動いてくれるような詐欺事案の場合には、すでに末期症状のことが多く、業者にお金が残っていないケースが多いです。

 

副業の詐欺の特徴

副業詐欺というのは、偽の案件でお金を騙し取ろうとする悪質な手口があります。

副業詐欺の特徴は次のようなもの。

まず、副業を始める前にお金を払わないといけないと言われたら、注意が必要。

たとえば、教材費や講習料、入会金、会員登録費用、月額使用料、契約手数料、情報提供料、マニュアルの購入費や研修費、コンサルタント費用などを払わされる場合もあります。

高額な初期費用を支払うことで、運営側が最初に利益を得て、その後に連絡が取れなくなる詐欺もあります。

先にお金を払わせる

副業詐欺では、「楽して稼げる」といったラクなイメージで勧誘されることが多いです。

SNSやWebサイトの広告に出てくる「誰でも確実に」「1日30分で簡単に」といった言葉には注意が必要。ここに広告費を出しても利益が得られるだけの構造になっているのです。

誰でもすぐに高額を手に入れられる話には裏があることが多く、結果的に損をすることになるでしょう。

 

さらに、近年、SNSを通じて副業詐欺の勧誘が増えています。

ウェブサイト広告などでは規制が入りやすいものの、TwitterやインスタグラムのDMやLINEなど、クローズの空間で勧誘されることが増えています。

過去にはLINEで友達追加したら、勝手に詐欺サイトやアフィリエイト広告が大量に送られてきたケースもありました。

Twitterでは、「リツイートした人は抽選で現金プレゼント」と謳って、当選者に広告クリックや現金の振り込みを要求する手口もありますので、注意が必要です。

 

 

副業でお金を払う前の注意点

副業を始める前に、運営会社の情報を調べておくことも大切です。

詐欺会社と疑われる場合、自社のWebサイトがなかったり、企業自体が架空だったりすることがあります。

企業名で検索かけるくらいはしておきましょう。

ブログ:【危機一髪】弁護士妻、ストウブ偽サイト詐欺の被害に!?

 

副業の仕組みがあいまいで、システムが明確ではない場合も詐欺の可能性が高いです。稼げることだけをアピールして、仕事内容が分からないものは詐欺の可能性があると考えておきましょう。

 

副業詐欺には、さらに、次のような手口がよく使われます。

投資話を持ちかけて高額請求する
偽の投資話を持ちかけ、高額な金額を請求してくる手口です。投資話を持ちかけられた場合、必ず儲かると言い切れる投資は存在しないため、誘いに乗らずに注意が必要です。

SNS経由では、投資資金を預けさせたり、ビットコインを買わせて送金させたり、独自アプリ上では儲かっているように見せるなどの手法がよくあります。

 

副業詐欺の返金

副業詐欺に騙されてしまった場合、返金を受けられる可能性は高くないです。

まず、カード利用の場合には、クレジットカード会社に支払いを停止してもらえるなら、それがベストです。

また、銀行口座に振込を指定してくる手口の場合には、いわゆる「振り込め詐欺救済法」に基づき金融機関口座を凍結してもらえるなら、やっておいた方が良いでしょう。口座にお金がないと回収確率は下がります。

勧誘態様によっては、クーリングオフ制度あります。これは、一定期間内であれば無条件で申込みの撤回や契約解除が認められる制度です。特定商取引法に基づき、訪問販売や電話勧誘販売などの取引について、8日間から20日間までのクーリングオフ期間が設けられています。相手の支払を拒絶する法的な理屈としては有効です。ただ、支払ったお金を回収するとなると、クーリングオフをしたあとに、実際に回収するための方法を考えなければなりません。

副業詐欺といえるような手法では、クーリングオフしたからといって、簡単に返金してくる業者は稀です。

 

このように副業詐欺では被害回復が難しい現実があり、複数の被害にあってるような場合には、その資金のため多額の債務を負ってしまっている人もいます。

被害回復を断念して、債務について自己破産や個人再生を申し立てて精算する人も多いです。

今回は、そのような自己破産の事例を紹介します。

 

 

副業詐欺で自己破産事例

もともと、相談者は小学校の教諭として働いていました。

当時、インターネットビジネスをすると不労所得を得られる、というメールが急に来ました。

公務員として、月収40万円程度あったので、生活をするには十分でしたが、臨時教員という立場だったので、将来の不安もあり、届いたメールから、アフィリエイトなどのインターネットビジネスをすれば、収入が上がると思い込んでしまいました。

ただ、そのビジネスに参加するには、初期費用がかかると言われたとのこと。

その初期費用にも、ステージがいくつかあり、高いステージの方が利益が出ると言われたため、モビットで借りて、数十万円の費用を払い、アフィリエイトを始めることに。

 

追加費用が発生

一度、申し込みをすると、もっと情報がもらえるとか、特典があるコースがあると言われ、契約をして、もっと良い動画にアクセスできるコースに申し込んだりしました。

しかし、ここのアフィリエイトで収入を上げるのは、相当に時間をかけなければならず、本業の教諭の仕事をしながらでは、とても不労所得を得られるようなものではありませんでした。

 

他の副業サービスの費用

そこで、もっと良いアフィリエイトはないかと探し、違うサービスにも申し込むなどして費用が新たにかかるようになってしまいました。

また、一つに申し込むと、違うサービスからもメール等が届くようになり、そのうちにFXの勉強をすれば利益が出せるという勧誘を受け、教材を買うなどしました。

ただ、仕事が忙しく、結局、FXの口座を作るところまでもいかず、費用だけが発生してしまいました。

このようなお金の使い方をしていると、生活費がなくなり、クレジットカード、消費者金融から借入をして生活費にあてるような状態になってしまいました。

 

投機行為の勧誘

このような生活を続けていくなかで、さらに、バイナリーオプションをすれば利益が出ると勧誘を受け、教材をまた購入してしまいました。

バイナリーオプションでは、実際に口座に数ヶ月で数万円を入金し取引をしたのですが、損失を出し、入金した分は戻ってきませんでした。
何をやってもうまく行かず、借金だけが積み上がっていきました。

 

転職で収入の減少

教諭の仕事の期間が終了になってしまい、転職活動中は、アルバイトをしていました。

収入が下がってしまい、それまでの支払が難しく、カード会社や消費者金融に返済するために借りるような状態になってしまいました。
転職の際には、歩合の営業職を探し、うまく仕事が見つかれば月収40万円くらいになるだろうと見込んでいました。

その後、営業の仕事に就けたのですが、実際に営業の仕事をしてみると、思ったように歩合収入はうまく上がらず、各社への返済や過去の教材費用の支払にあてるだけの収入は得られませんでした。

このような収支状況で、返済ができなかったため相談に来たという経緯でした。

 

詐欺商法の報告

話を聞く限り、悪質商法が理由のように感じます。ただ、複数社との取引があり、当初のものはかなり時間が経っています。消費者金融等の返済もあり、悪質商法業者に対して、支払金を回収できるかは疑問でした。

また、業者への支払が終わっていないものもありました。

そこで、消費者金融、クレジットカードのほか、副業商法の業者も債権者一覧表に載せて、自己破産の申立を進めることになりました。

 

相談者は、当時は認識していなかったのですが、各業者は、インターネットで調べると詐欺商法のようで、いくつかの業者は、すでにネット上からホームページが消えていたり、弁護士に依頼した際の受任通知も届いていなかったりするようでした。

当方でも、受任通知が届かなかった業者については、電話で郵便を送ることは伝えたり、Eメールから受任通知を出してもらったりとしましたが、債権調査票を返信してきたのは、一部のみ。

 

副業商法と債権者一覧表

裁判所から、債権者一覧表記載の業者のうち、債権調査票未着の債権者について疎明資料を求められています。

領収証等もないため、申込時の金額のみの資料として、申込時のメール画面の写真を提出するなどしています。

一部支払をしている業者には内訳の説明を報告書に記載しています。

また、裁判所からの通知が届かない債権者については、法人の登記簿謄本を取得し、住所地に変更はないことを報告しています。

一部業者については、受任通知は届いたものの、あて所が不明になり、現地調査が必要になっています。

現地調査については、その年月日日時、本店所在地を訪問、看板、表札、郵便受け等のチェックをします。このビルには、レンタルオフィス業者が複数入居しており、一時的に、レンタルオフィスを利用していたものの、現在は使用を停止したため郵便物が届かなくなったものと推認されるとの報告を出しています。

副業詐欺業者逃げる

同ビルには受付があったため、受付員に債権者名を出し確認しましたが、現在、入居している事実はなく、記録上も所在は確認できないとのことでした。
以上より、同債権者については、住所不明と扱わざるを得ないとして進めています。

 

副業詐欺の借金を理由に自己破産をする場合、副業商材への高額支出が浪費になるのではないかという問題があります。

ただ、今回は、詐欺被害の性質が強いとの報告をし、免責不許可事由にはならないとの主張で申立をしています。

免責不許可事由の調査が必要となる破産管財事件にはならずに、同時廃止手続で免責許可が出されて解決となっています。

 


副業詐欺、情報商材を理由とした自己破産事件も多く相談があります。ご相談は無料で受け付けています。

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弁護士 石井琢磨 神奈川県弁護士会所属 日弁連登録番号28708

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