自己破産ケース
ケース紹介
ケース紹介225 Rさんの事例
40代 /男性 / 自営業
借入の理由:住宅ローン、給料差し押さえ
愛川町にお住まいの40代男性のケースです。
過去に住宅ローンで競売・裁判があり、給料を差し押さえられたとの相談でした。
この記事は、
- 住宅ローンが払えず自己破産を考えている
- 給料の差し押さえがされた
という人に役立つ内容です。
自己破産と給与差し押さえ
自己破産を申し立てる時点で、債権者から差し押さえをされていることがあります。
その場合、特別な手続が必要です。
自己破産というと、財産を差し押さえられると考えている人がいますが、そうではありません。
財産を差し押さえるには、裁判所の判決などが必要になります。裁判所の判決には、それぞれの債権者が個別に裁判所に訴えを起こして勝訴しなければなりません。
このような個別の債権者の動きによるので、自己破産をするから差し押さえられるという関係ではないのです。
今回は、このような債権者個別の動きがあった場合の流れについて解説します。
自己破産の申立後の差し押さえ
自己破産の申立を裁判所にした後は、そこから新しく差し押さえがされることはほとんどありません。
申立後に破産の決定が出たら、差し押さえはできないからです。
ただ、自己破産は、弁護士に依頼したからすぐに申立ができる、というものではないです。
依頼後、色々と準備が必要です。費用の問題もあるでしょう。
最近では、数ヶ月かかることも多いです。債権調査にも時間がかかります。
この間に、差し押さえをされることはあります。
特に、弁護士に依頼する前に裁判を起こされていて判決がとられているような場合ですと、差し押さえリスクは高まります。
差し押さえられる対象としては、預貯金や給与が多いです。判決を取られている場合には、差し押さえリスクが高いとして、弁護士に相談し、早めに自己破産の申立をしたほうが良いでしょう。弁護士からの受任通知で督促は止まるのですが、差し押さえ自体は止められません。
自己破産申立て前の差し押さえ
自己破産申立て前の差し押さえは禁止されていません。裁判を起こすことも自由にできます。
弁護士に依頼して受任通知を送っただけでは、この動きは止められないのです。
自己破産の申立準備が遅れれば遅れるほど、差し押さえリスクは高まります。
もっとも差し押さえが多いのが給与です。消費者金融やクレジット会社は、貸付時に勤務先の確認をしていることから、職場が変わっていないのであれば、簡単に給与差し押さえに動けます。
預金差し押さえだと差し押さえ時の残高を回収して終わりですが、給与であれば、毎月回収が続きます。
自己破産申立後の差押え取り消し
自己破産を裁判所に申立をした場合、各種決定によって、差し押さえはいずれ取り消されます。
しかし、すぐに取り消されるわけではありません。
破産管財人が選ばれない同時廃止手続では、法的には、執行停止をして、免責許可決定が確定した後に取り消しの申立をします。
破産や免責によって差し押さえが取り消されたという通知が第三債務者(職場等)に行き、差し押さえが取り消され、給与の手取り額が元に戻ります。
Q.給料を差し押えられているのですが、破産をすれば全額受け取れますか?
強制執行停止の手続、費用
これらの手続に必要な費用・郵便切手代は、裁判所によって違いますので、事前に確認しておきます。
裁判所の破産係ではなく、債権執行係に確認します。
たとえば、2022年の横浜地方裁判所小田原支部では、
郵券は
債権者宛 529円
第三債務者宛 529円とされています。
速達で発送したいなら、速達料金260円をそれぞれ加算。
債務者代理人宛返信用封筒 84円
を入れてもらえれば、停止決定を代理人宛に送付するとされています。
上申書本文に、当事者目録を付けてもらえると助かるといわれています。
速達にするかどうかは、申立と、次回給料日までのタイミングでしょう。
管財事件と差し押さえの取り消し
同時廃止手続では、このように免責許可確定後の取り消しまで差し押さえが取り消せません。
これに対し、破産管財人が選ばれた管財手続では、破産管財人による強制執行取消申立により、差し押さえの取り消しは早いです。
もともと破産管財手続を使う目的の一つとして、強制執行を取り消すため、という類型もあったくらいです。
ただ、管財手続にするには、管財予納金20万円の負担が必要になります。給料差し押さえを受けている状態で、予納金を別に準備できる収入であれば良いですが、多くの人は、このためだけに管財手続にすることは考えず、停止・取り消しというルートで行っているようです。
自己破産決定後の差し押さえ取り下げ交渉
このように、自己破産でよく使われる同時廃止では、自己破産の決定が出ただけでは、給与差押は止まりません。
ただ、例外もあります。
それは、差し押さえをした債権者自身が、差し押さえを取り下げてくれる場合です。取り下げてくれれば、差し押さえの申立自体がなくなりますので、その後の給料額は戻ります。強制執行停止・取消というルートよりも早いです。
しかし、債権者には差し押さえを取り下げる義務はありません。それでも、取り下げてもらえないかという交渉をすることはできます。取り下げてくれるかどうかは、債権者次第、個別事情によってばらつきはあります。
給料差し押さえの取り下げ
今回の事例では、もともとが住宅ローン債権による給与差し押さえがありました。
自己破産の申立後、早いタイミングで破産手続き開始決定と、廃止決定が出ました(同時廃止)。
停止申立の前に、債権者との間で取り下げ交渉をした結果、うまく取り下げてもらえました。
債権者に対しては以下のように通知しています。
上記破産者の件ですが、令和4年●日付で,横浜地方裁判所小田原支部に自己破産の申立をし、別紙のとおり、同年●日午後4時、破産手続廃止の決定を受けました。
同破産者は、債権者●の強制執行手続き(同庁令和4年(ル)第●号)により、給与を差し押さえられておりますが、上記の通り、破産手続廃止決定を受けましたので、債権者において、上記強制執行手続きを取り下げて頂けないかご検討ください。
取下げが不可の場合は、当方から強制執行手続き停止の申立てを行い、免責許可決定が確定した後に手続取消しの申立てを行うことになりますので、その旨お知らせいただきますようお願い致します。
債権者側から取下げて頂けますと、強制執行事件を早期に終了することができますので、大変助かります。破産者の生活再建のためにもご検討よろしくお願いいたします。
消費者金融の中には取り下げてくれないところもありますが、社内の運用が変わることはよくあるので交渉だけしてみると良いではないでしょうか。
差し押さえ取り下げのメリット
差し押さえの取消ではなく、債権者からの取り下げだと、第三債務者である会社には、債権者が取り下げただけ、という連絡が行きます。
自己破産決定等による停止や取消の場合には、破産法の根拠条文が記載される運用のため、債権者からの取り下げだと、会社には、事情が伝わりにくい点がメリットともいえるでしょう。
普通に債権者に対して支払って差し押さえが取り下げる場合と区別がつきにくいでしょう。
住宅ローンによる給料差し押さえ
今回の差し押さえとなったのが、住宅ローン債権でした。
主な借金は、住宅ローンの残となります。
もともとの購入は、20年以上前。
住宅ローンを借入れて、福岡にマンションを購入しました。家族で住んでいました。
約5年後、マンションは競売に。
競売後、5年経過前に、住宅ローンの残金について、裁判を起こされ、判決が出されました。その後、毎月、数千円の返済を続けていました。
しかし、他の理由で消費者金融、銀行のカードローンで多重債務に。
一時的には、月収36万円程度はあったものの、借金も増えていて、返済を続けると生活が苦しい状態でした。
そこで、任意整理をすれば支払いができると考え、弁護士事務所に任意整理を依頼しました。この頃に、ほとんどのカードの利用を停止し、返済も止めました。
しかし、その年には、判決をとられていた住宅ローン債権者から、給料を差し押さえられ、職場に居づらくなったため、退職となりました。当時、月収36万円程度があり、任意整理もしたので何とか払えると考えていたのですが、すべての予定が狂ってしまいました。任意整理を頼んだ弁護士からも辞任され、生活自体が成り立たなくなってしまいました。
2回めの給料差押え
2年前に、現在の職場に就職することができましたが、以前よりも収入は低く、生活をするだけで精一杯でした。通信費等も滞納するようになってしまいました。
しかし、住宅ローン債権で、再び、給料の差し押さえを受けてしまいました。
このままでは、生活もできないと考え、弁護士に相談しに来たという経緯でした。
住宅ローンの残債権で、給料を差し押さえられ、転職。しかし、再び転職先の給料を差し押さえられてしまったという経緯でした。
競売による住宅ローン残金が確定した時点で、自己破産等で精算をしておかないと、このように延々と給料を差し押さえられるリスクがつきまといます。
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