自己破産ケース
ケース紹介
ケース紹介223 Hさんの事例
40代 /女性 / 自営業
借入の理由:ペット費用、医療費
厚木市にお住まいの40代女性のケースです。
親が相談者名義でかけていた保険が問題になった事例です。
この記事は、
- ペット費用での自己破産を考えている
- 親がかけていた保険や預貯金がある
という人に役立つ内容です。
病気により収入減
最初は銀行提携のクレジットカードを作成しただけでした。
当時、営業事務の仕事をしていましたが、銀行口座を開設した際に、付帯していたカードを日常的なショッピングやペット費用の支払い等に利用するように。
また、その後、エポスカードを作り、ショッピング利用。
当時は、実家にいて、月収も16万円程度あったので、返済できなくなるようなことはありませんでした。
その後、会社を辞めて、自営業として働くことに。
この頃、複数枚のクレジットカードを利用してはいました。深く考えずにリボ払いにしていたので、毎月の返済に困ることはありませんでした。
しかし、その後に、病気に。投薬治療をしたところ、うつ症状が出てきてしまいました。
それまで、事業の集客は、ブログを書いてしていたのですが、うつ症状のため、ほとんど書けず、仕事が激減。
そのため、貯金を取り崩して生活するように。
会社員自体から貯めていた200万円程度の預貯金を徐々に使い、なくなってしまいました。
ペット関連費用の支出
約3年前には、預金もなくなってしまい、症状も悪化していき、以前のようには働けなくなってしまいました。
カードの返済もリボ払いにして支払を抑えたのですが、利息が高くなったため、生活費のため、楽天カードなどの新しいクレジットカードを複数枚、利用するように。この頃は、病気が治れば、また収入を得ることができるので、返済できると考えていたとのこと。
しかし、2年前には、飼っていた犬が、癌などの複数の病気を発症。
ペットの病院代が大きくかかるようになってしまいました。手元にお金がなかったため、カード払いにするなどして対応。
その後には、自身が、うつ病と診断されるように。
ここで障害年金の認定を受けました。
生活費支出を抑え、障害年金とわずかな事業収入で返済を回してきたのですが、返済額が徐々に増えてきて、新たなキャッシングもできなくなり、返済に行き詰まってしまい、弁護士に相談。
当初は、任意整理や個人再生など、少しでも払う方法を検討しましたが、年金自体もいつまでもらえるかわからないので、返済できる約束ができず、自己破産を選択という経緯でした。
親が管理していた保険が発覚
メインバンクからキャッシングしていたため、受任通知前にメインバンクを変更。
親が管理していたという通帳があったので、そちらを利用するようになったとのことでした。
その通帳は、もともと親が開設して管理していたものでした。
打ち合わせの際に、その預金明細を見ると、保険があることが判明。
これについても親が契約し、保険料も親が払っていたものと説明されました。
しかし、名義は相談者。この保険の解約返戻金額が相当にあり、20万円を大きく上回っている状態でした。
保険契約と自己破産
自己破産手続きでは、解約返戻金が20万円を上回っていれば財産ありとして管財事件になります。
保険自体を自由財産拡張で残せる可能性もありますが、残せる金額としては99万円までが原則。
これを上回っている場合には、解約や破産財団にお金を入れて保険を解放してもらう必要があります。
ただ、今回は次のような経緯を説明しています。
この保険や引き落とし口座自体、相談者は存在を知りませんでした。もともと親が通帳を管理していて、保険に加入し、保険料の支払も親がしていました。
打ち合わせにおいて、通帳明細を確認したところ、保険の存在が明らかになったので、調査をして相談者名義の保険が判明したという経緯を説明しています。
その後、親も弁護士事務所に来ましたが、保険は自分のものだと主張、解約等はしないと言われていました。
保険は誰の財産か
保険が誰の財産なのかについては、預貯金での紛争が参考になります。
契約名義人なのか、資金を出していた人なのか、預貯金、特に相続分野での紛争は多いです。
まずあるのが、相続人と税務署の紛争です。
相続税の関係で、相続人名義になっている預貯金口座も、相続財産なのではないか、相続税の課税対象なのではないかという争いです。
裁判例(東京地判平20・10・17)では、「①当該財産又はその購入原資の出捐者、②当該財産の管理及び運用の状況、③当該財産から生ずる利益の帰属者との関係、④被相続人と当該財産の名義人並びに当該財産の管理及び運用する者
との関係、⑤当該財産の名義人がその名義を有することになった経緯等を総合考慮して判断するのが相当である」とされていて、このような点がポイントにはなります。
特に、原資の出捐者は誰かという点は重視されます。誰がお金を出していたのかという実質です。
相続税の調査では、預金の原資を被相続人が出していて、口座開設手続も被相続人が行い、通帳、印鑑等も被相続人が管理している場合には、名義預金として相続財産と判断される可能性が高いです。
贈与財産の可能性
ただ、お金を出したのが別人であっても、贈与があると権利移転がされています。
お金を被相続人が出していても、口座開設手続を名義人が行い、通帳、印鑑も名義人が所持し管理・運用していたのであれば、贈与があったとして、名義人の財産と判断されることも多いです。
このような判断基準は、相続税でのシーン以外に、相続人間の紛争でも使われます。
相続財産に含まれるのか、相続人の財産なのかが争われるシーンです。
この判断基準は、さらに、相続以外でも、財産が誰のものかというシーンで使われます。
自己破産と保険の意見書
保険解約返戻金が親の財産であり、破産財団に属しないとの意見書を提出しています。
申立人名義の以下の保険解約返戻金は、破産財団を構成しないものと考えます。
(1) 保険契約について
申立人は、上記保険契約の存在自体を認識しておらず、申立人の親が主導して契約締結や切り替えをしてきたものと認められます。
(2) 保険料の支払について
各保険の保険料は、申立人名義の預金通帳から引き落とされているものの、引落直前に保険料相当額の入金がされています。
同入金については、すべて申立人の親がしていたものであり、申立人の資産から支出されたものではありません。
(3) 保険料の支払口座について
保険料が引き落とされている貯金通帳は、令和3年○月まで、申立人の親が管理していたものであり、その後、自身の預金口座がなくなった申立人に引き継がれたものです。
それ以前には、申立人は口座の存在自体を認識していませんでした。
(4) 保険証書の保管について
各保険の共済証書は、申立人の親が保管しています。
(5) 親の主張について
申立人の親は、各保険解約返戻金について、自身の財産であると主張しています。
また、申立人の自己破産手続きに反対しており、協力もできないとの意向を示しています。管財予納金の準備のためにも、上記保険を利用することは拒絶したため、予納金については、申立人の収入から積み立てています。
(6) 以上の事情から、各保険は、申立人名義ではあるものの、申立人の親の財産であると認められ、破産財団を構成しないものと考えます。
親の陳述書
このような意見書を提出して、破産管財人と面談しています。
破産管財人は、当初、保険を解約する意向(残さない)でしたが、まずは親の陳述書を提出してほしいとのことでした。
親の言い分を疎明資料として出す必要があるとの考えです。
親も、破産手続きや解約には反対しているものの、自身に有利な活動であれば協力が得られそうとのことで、事務所に来てもらい、陳述書を作成しています。
特に、保険料の支払について、自身の収入から入金しているとのことでしたので、そのつながりを資料とともに提出しています。
また、保険契約に至った経緯も、仕事上の付き合いが必要なところ、担当者から勧誘されて加入したとの説明、業界での勧誘実態を報告しています。
保険契約書の調査
破産管財人から保険会社に対して、保険契約書の写しの交付申請など、裏付け調査がされました。
そこで、再度、親の陳述書を提出しています。
口座の届出印も、親の印鑑を利用し、親が管理していたことを示しています。
また、破産管財人からは、この保険について、毎年、保険料を破産者に贈与していたのではないかと質問されました。しかし、親は、自身の保険と考えており、破産者に対して、贈与するとか、あげるとか話をしたことは今までに一度もなかったと陳述書に記載しています。
このようなやりとりの結果、当初は、保険が破産財団に属する、解約しないにしても99万円を上回る金額について破産財団に支払うよう求めていた破産管財人も、裁判所と協議し、親の財産であるとして進める方針に変更してくれました。
その結果、保険は解約せずに残せ、裁判所等に払った額としては、管財予納金の20万円のみで破産手続を終えることができています。
免責不許可事由もなかったため、免責許可がされ借金の支払い義務はなくなっています。
親がかけていた保険があるなどの自己破産事件では参考にしてみてください。ご相談は無料で受け付けています。
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