自己破産ケース
ケース紹介
ケース紹介218 Tさんの事例
50代 /女性 / 会社員
借入の理由:住宅ローン保証、秘匿
神奈川県にお住まいの50代女性のケースです。
住宅ローン保証で、借金が残ってしまったとの相談でした。住所を隠して自己破産したいとの希望が出されました。
この記事は、
- 個人情報を隠して自己破産をしたい
- DVから逃げつつ自己破産を考えている
という人に役立つ内容です。
住所秘匿
自己破産手続きをしたいものの、元夫からのDVなどもあり、住所を公開したくないとの希望がありました。
このような希望について、裁判所と協議しながら進めた事件です。
個人情報を伏せての自己破産では、秘匿の申出などの方法があります。
このような手続をとるにも、どのような事情なのか、破産理由との関係も問題になってきます。
住宅ローンの保証
まず、破産の理由ですが、夫とともに、厚木市内に自宅を購入したのがきっかけでした。
共有持分は土地建物いずれも2分の1でした。夫が第一勧業銀行(現・みずほ銀行)で住宅ローンを組むにあたり、住宅ローンの連帯保証人となりました。
ほかは日常的なクレジットカードの債務でした。
夫の失職、DV
しかし、数年前、夫が仕事を辞め、無職に。
夫の給与収入がなくなったため、住宅ローンの支払は主に相談者の給与から行うようになりました。
また、従前から夫から殴る・蹴るのDVを受けていたところ、この頃から夫のDVが激化。
その後、夫とは離婚となりました。離婚にあたり、DV等支援措置を受け、進めました。
住宅ローンで購入した厚木市内の自宅には、元夫が引続き居住。
元夫も住宅ローンを滞納し、保証会社による代位弁済が。
自宅については、元夫とともに任意売却。
それでも600万円以上の住宅ローン求償債務が残ってしまいました。
ここで、自己破産の相談となります。
借金の理由は、住宅ローンであり、自己破産手続きは問題ないものの、個人情報の取り扱いがどうなるのか問題となった事案でした。
約1年前の財産処分
自己破産手続きでは、過去2年間の預金明細等を提出します。
そこで、財産処分があれば、具体的な金額、使途等を説明します。
今回の事例では、100万円以上の生命保険(個人年金)を解約していた事情がありました。
使途としては、子供の学費や、結婚式費用等でした。
ただ、これらは自宅の任意売却前でした。元夫による住宅ローン返済が続いていれば、自己破産にはならなかったものと見込まれた時期でした。借金の請求を受ける前の財産処分ということで、破産手続きでは問題とされませんでした。
同額程度の財産処分でも、多重債務状態での処分だと否認権の問題が出て、管財事件にされた可能性が高いです。
自己破産破産記録の閲覧
自己破産の記録は、原則的には非公開ですが、利害関係人は閲覧請求できます。
関係者だと閲覧できる可能性があるため、この可能性を限りなく低くするため、秘匿の手続を検討しました。
秘匿措置の申出書
自己破産の申立の際に、提出した書類は閲覧される可能性があります。
通常の裁判の証拠等よりは制限がかかっていますが、誰にも知られたくないと考える場合には、申立とは別に秘匿措置の申出書を提出することもできます。
この際、何を秘匿情報とするのか希望を出します。
一般的には、住所・電話番号・就業先が対象となります。
秘匿を希望する理由
秘匿措置の申出書には秘匿を希望する理由も記載します。
裁判所としても例外的な措置なので、どのような理由なのか示す必要があります。
DV事案などでは、身体への危険があることから認められやすい傾向にあります。
自己破産の記録だけでなく、離婚などではよく秘匿が認められています。
秘匿情報記載書
秘匿の申出をする際には、実際の情報を裁判所に伝える必要はあります。
真の住所地を秘匿情報として手続きを進めたいとしても、真の住所地情報を裁判所には提出する必要があります。
これは秘匿情報記載書として提出します。こちらの現住所等の情報を記載する取り扱いです。
秘匿情報と住民票
住民票上の住所を秘匿情報としたい場合、提出する秘匿情報記載書に添付する住民票の写しでは、秘匿部分をマスキングしたコピーも提出します。
ただ、同一市内での転居がある場合で、居住している市町村自体を秘匿情報としたい場合には、その市で発行された住民票の写し自体が、判明資料になってしまいます。
そのため、秘匿措置の申出書で、住民票の秘匿箇所はすべてであると記載しなければなりません。
官報掲載住所の上申書
相談者の希望もあり、このような秘匿情報の申請をしたのですが、最終的には秘匿情報の取り扱いとはなりませんでした。
自己破産記録の閲覧は、利害関係人しかできません。
債権者などができることになります。
今回のケースでは、情報を知られたくない相手は債権者ではなく、元配偶者でした。配偶者自身は、破産手続きでの債権者ではありません。
元配偶者が自己破産記録を見たいと裁判所に言っても、利害関係人ではないとされ審査が通らないものと見込まれました。
そこで、官報に掲載する住所を、現住所ではない住所とする方法で良いのではないかと指摘されました。
最終的には、官報掲載住所に関する上申書を提出しています。
上記破産事件について、決定及び官報公告において表示される申立人の住所は、住民票上の現住所ではなく、下記の前住所とされたく上申致します。
記
<前住所>
神奈川県○丁目○号
万一、元配偶者が裁判所に対して、破産記録の閲覧申請をしたとしても、その際、記録の中には、秘匿の申出書などのやりとりが残っているため、審査はより慎重にされることになるでしょう。
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