自己破産ケース
ケース紹介
ケース紹介215 Yさんの事例
50代 /女性 / パート
借入の理由:旅行、家族の失職
厚木市に夫婦で暮らしている50代女性のケースです。
借金がある時期に、相続財産が入り、数百万円の旅行支出をしていたという事案です。これが免責不許可事由になるのか、破産管財人をつけるのか問題となりました。
この記事は、
- 自己破産を考えているが旅行支出が多い
- 浪費での自己破産を考えている
という人に役立つ内容です。
住宅ローンでの自己破産
問題となった旅行支出があった時期にはすでに住宅ローンを組んでいました。
また、クレジットカード作成経緯は、車の購入とのこと。
トヨタで軽自動車を購入することになり、トヨタファイナンスのクレジットカードを作成。
この頃の給与は手取りで12~13万円でしたが、結婚していたり、離婚後も実家暮らしということもあり、支払いはできていたとのこと。
その後、再婚し、厚木市内に新しく家を購入することに。
しかし、夫は過去に破産歴があり、ローンを組むことが難しかったので、相談者名義で住宅ローンを組むことになりました。
相続財産と浪費
その後、母が父から相続していた不動産を売却。
相談者も、遺産の取り分として1000万円以上のお金を受け取りました。
一部は、自宅のリフォーム代に使用。
ちょうどその頃に夫が失職。
夫は、「大金も入ったので、このお金で1年間、遊ばせてほしい」と言い、そこから2年程度の間、仕事をしませんでした。
この2年程度の間に、200万円~300万円を旅行に行くなどして、使用してしまいます。
この間は、相談者の収入だけで生活していたので、不足した生活費や、家具の購入費などにあててしまい、受け取ったお金は徐々になくなってしまったとのこと。
貯金が減っていくので、不安になり、夫に働くようお願いしたのですが、なかなか就職せず、手元のお金を使ったり、クレジットカードで生活費を補填するしかない生活になりました。
退職金の受領
その後、相続で受け取ったお金は使い切り、次第に債務が膨れ上がりました。
同時期、勤めていた会社を退職しました。仕事の内容が変わったこと、増えたことなどから将来不安を感じ、退職金をもらったほうが良いと考えて退職したとのことでした。
退職金は約200万円。そこから返済や生活費を捻出する生活になりました。
すぐに転職する気持ちになれず、1年以上、仕事をせずに休む期間となりました。
退職金の使途については、自己破産では説明を求められる内容です。
なお、自己破産では、退職金見込額は財産とされます。まだ退職していない場合には見込額の8分の1程度が処分対象になりますが、実際に受け取った退職金は、預貯金などと同視されるので、8分の1という減額にはなりません。
自宅の競売
その後、生活費や返済のためのお金が不足し、横浜銀行や三井住友銀行のキャッシングを利用。
相談者もパートの仕事につくものの転々とするような状態でした。
夫も就職しましたが、月収が20万円程度で、パート収入も不安定だったため、住宅ローンも払えなくなり、遅れるように。2年前には、横浜地方裁判所小田原支部より自宅が競売にかけられるという通知が届きました。
競売の結果、住宅ローンの残金が1000万円以上もあり、他の債務もあることから、支払いは不可能だと判断、自己破産の相談に来たという経緯です。
相続財産や退職金を適切に処理していれば、住宅を維持できた可能性も十分にあったといえるでしょう。
通帳内のテレボート支出
自己破産手続きでは、預金の取引明細について裁判所のチェックが入ります。
相談者名義の預金口座に、テレボートへの支出がありました。
競艇支出と思われる記載です。ギャンブルがあると、免責不許可事由とされる可能性があります。
しかし、聞いてみると、競艇の利用ではあるものの、相談者ではなく、夫が利用していたものとのことでした。
当時は、通帳自体も夫が管理し、夫自身のお金を入れて、インターネットで支出し購入していたとのこと。その後、夫も競艇を止め、相談者の給料が入ることから、通帳自体は相談者が管理するようになったとの話でした。
全体的な金額や時期等から、この点については、裁判所からの指摘は入りませんでした。
ただ、自身の通帳に記載があるものは、原則としてその人の支出だろうと考えられるのが通常です。これを違うというのであれば、それなりの説明が求められます。単に、他人の取引だというだけでは認められず、調査のため管財事件になったという事例もありますので、ご注意ください。
不動産売却代金の支出など
通帳に、遺産の不動産売却代金からの遺産分割分配金が入金されていました。
神奈川県内での自己破産手続きでの運用では、預金明細については過去2年分の提出を求められます。
しかし、不動産の任意売却や遺産分割など多額の入金がある場合には、その使途を確認されるため、2年以上前の明細の提出を求められることも多いです。
使途については、時期によっては覚えておらず、大まかな説明しかできないかもしれませんが、それなりの説明は必要となりますので、準備しておく必要はあるでしょう。
夫の債務方針について
自己破産の認定は、申立人本人に絞ってされます。要件である支払不能の判断についても、本人の資力をもとに判断されます。
とはいえ、同居家族に債務がある場合に、その債務はどうするのか裁判所で指摘されることもあります。
これは、申立人だけを自己破産で借金免除したとしても、同一世帯の家族が借金を負っていることで、家計収支が改善しないのであれば、また債務問題を引き起こす可能性があるからです。
一人ひとりに判断されるといっても、同居家族の債務をどうするのかというところは頭に入れておく必要があるのです。本来であれば、自己破産ではなくても、個人再生や任意整理などの債務整理をしておくほうが望ましいです。そのような債務整理をしているのであれば、裁判所としては、同居家族の債務についてもゴールが見えるので、自己破産を認めてあげやすくなるわけです。
今回のケースでも、夫に債務があったことから、その方向性を確認されました。
ただ、相談者によれば、夫の借金について、自己破産を勧めたことはありましたが、なるべく支払っていきたいと言い、仕事を頑張り、収入を上げたようでした。そのため、現時点で自己破産などをする意思はないことを報告書にまとめています。
夫の債務原因の説明
自己破産では、家族の債務状況も報告します。その際、配偶者に多額の債務があるのであれば、その使途の確認もされます。家族全体での浪費があるかどうかのチェックという意味もあるでしょう。
今回、夫の債務については、半分程度は自動車ローンでした。朝が早い仕事なので、車が必要とのことでした。
それ以外については、家計収入が不足した時期に、銀行カードローンを利用して生活費の補填をしたものです。銀行からの勧誘を受けてカードを作ったとのことでした。
旅行支出の説明
自己破産では、浪費により財産を著しく減少させたり、過大な債務を負った場合には免責不許可事由になります。
裁量免責を狙う申立が必要だったり、免責調査のため破産管財人が選任される管財手続きにされたりします。
どれくらいが浪費になるのかといえば、資産や収入によって違うので、明確にいくら以上の旅行が浪費と決まっているわけではありません。
今回の事例では、相続財産を短期間に使ってしまっている点がありますが、借入金を直接使ったものではありませんでした。ただ、住宅ローンを負っている状態で、多額の支出をしているため、その大まかな支出内容については報告が必要となりました。
たとえば、国内旅行へ夫婦と共通の友人4人で行き、宿泊費を負担し、2泊程度で60万円程度の支出。
また、別に国内旅行へ夫婦と双方の親と行き、費用は全額負担し、2泊程度で80万円程度の支出。
別に夫婦で国内旅行、費用は30万円程度。
それ以外に、沖縄旅行へ夫婦と友人4人で3泊程度し、宿泊費は負担し、60万円程度を支出。
夫婦で国内旅行に行き、30万円程度を支出。
このような旅行支出が数年間の間にされていたため、報告が必要となりました。
自動車の買い替え
預金明細に複数の中古自動車販売会社の入出金がありました。
比較的短い期間に、何度も買い替えをしていたため、裁判所から整理を求められました。
中古車であっても、頻繁な買い替えをしている場合には、浪費とされてしまう可能性があります。
また、必要性が低いのに、複数台を家族で利用している場合には、浪費とされてしまう可能性が上がります。
車の買い替えがある場合には、まず、客観的な事実を整理します。
いつ、どのような車をいくらで売買したのか、です。
これを整理することで、複数台の所有をしていた場合には、その時期、期間が特定できます。これらを、まずは預金明細から整理していきます。購入検討時にメールのやりとりなどがあれば、その内容を再確認すべきでしょう。
そのうえで、当時の家族状況、仕事の状況などから必要性、買い替えた理由等を説明していきます。
事実と評価を分けての報告となります。
今回も、1年程度の買い替え、複数の車が所有されていた時期があったので、その説明をしています。
ゆうちょ銀行の通帳
裁判所からの指摘で、ゆうちょ銀行の預金口座について調査しています。
本人は全く認識がなかったのですが、存在を指摘されたため調査したものです。
本人が小さい頃、母親が開設した口座が存在した事実が判明しました。
直近2年間の取引報告書を提出しますが、この期間の取引はありませんでした。ゆうちょ銀行からの開示資料によっても、睡眠(長期間利用がなかった口座)とされており、旧姓名義の口座でした。
免責の意見書
弁護士からは免責不許可事由に関する意見書を提出しています。
約2年の間に、2~300万円の旅行支出があり、浪費に該当する可能性はある。
しかし、同支出の原資は、相続財産であり、借入による支出ではない。また、当時の債務状況は、住宅ローンと日常的なクレジットカード利用程度のものであった。
申立人の支払不能の原因は、その後、夫の無収入が予想以上に長期化したことや、自身の退職による家計収入の激減、その後の転職がうまくいかず、収入が不安定となり、住宅ローンの支払いが行き詰まったことによるものである。
以上から、上記支出は、免責不許可事由に該当しないと認められる。
同時廃止により免責
裁判所から旅行支出や車の件での補正指示が何度も入ったものの、最終的には、破産管財人をつけずに、同時廃止により免責許可が出ています。
旅行を理由とする自己破産相談もあります。ご相談は無料で受け付けています。
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