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ケース紹介212 Tさんの事例

60代 /男性 / アルバイト

借入の理由:連帯保証人


厚木市にお住まいの60代男性のケースです。

子供の会社の保証人になってしまい、1000万円以上の借金があるという相談でした。

この記事は、

  • 多額の借金の保証人になってしまった
  • 保証債務での自己破産を考えている

という人に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2022.9.2

 

子供費用でアコムに借金

最初の借入は消費者金融でした。

当時、月に約28万円の収入を得ていましたが、アコムやアイフルなどの消費者金融から借入をしたとのこと。

当時、長女の結婚や出産があり、長女に費用がなかったので、相談者が負担。また、家庭用の車もローンで買いました。当時の収入からすれば、支払はできるものと考えていました。


しかし、その後、退職し、自営業を始めました。収入が上がると見込んで始めたのですが、うまくいかず、月収は6万円程度に落ち込んでしまいました。生活ができなくなり、消費者金融から追加で借入をするなどして、生活費を補っていました。

 

保証人になる

その後、子供に頼まれて、子供が経営する会社が融資を受ける際に保証人になりました。

日本政策金融公庫から融資を受けて、運転資金や会社名義の車のローン返済にあてたりしていたようでした。

会社自体は、良い時期もあったものの、数年後には、売上は減ってしまい、主たる業務が続けられなくなってしまったようでした。

数年後には、売上もなくなりました。

そのような会社だったのに、複合機リースの勧誘を受け、言われるままにリース契約を組むことになり、やはり相談者が保証人になりました。

冷静に考えれば、仕事もないので、複合機の必要はなく、リースまでしなくて良かったのですが、勧誘されるままに契約をしてしまったとのことでした。

まだ、法人の事務所があった時期に、電話番を頼んでいた従業員が勧誘を受け、契約することになってしまったとのことでした。

 

裁判を起こされる

自身の自営業もあまりにうまく行かず、収入がほとんどなくなってしまい、借金支払を止めてしまいました。

その後、消費者金融からは、裁判等を起こされたりしていました。

今の仕事に転職できたものの、日々の生活費を支払ったり、滞納していた税金の請求を優先するなどして、債務の支払を再開できませんでした。

 

税金の差し押さえ

その税金自体も、滞納は解消できず、差押を受けました。

保険の差押えや、自動車の公売等の処分がなされてしまいます。

税金の差し押さえを受け、精神的に参ってしまい、法律相談に来たという経緯でした。

相談の中で、保証債務があることを思い出し、多額の滞納があることが判明しました。

負債総額は、保証債務だけで1000万円近くあり、とても返済できない状態のため、自己破産の依頼となりました。

債務としては、5社で1200万円。そのうち、公庫の保証債務が900万円、リースの保証が175万円でしたので、大部分が保証人としての債務でした。

 

保証した会社の説明

会社の保証人になったということが、債務の大部分を占めていました。

このような場合には、主たる債務者である会社の状況を説明する必要があります。

保証人であっても、主たる債務者が利益を出して返済できるのであれば、保証人の自己破産で、支払不能といえるかが問題になるからです。

今回の主たる債務者の会社は、子供が100パーセント株式を持つ会社でした。

相談者も、アルバイトのとりまとめなど手伝いはしたことがありましたが、報酬や給料がもらえるような経営状況ではなく、無償での手伝いにとどまっていたとのこと。

その後、売上は減り、まともな業務は続けられなくなり、事務所も閉鎖し、備品等もなくなったようです。

決算もしていない様子。

子供も業務をしていないようで、相談者が最後に話をしたのは、3年程度前で、連絡も取れていないとのことでした。

主たる債務者による支払い可能性も、相談者が払った場合の求償可能性もほぼないといえるでしょう。

この点の調査が不十分だと、保証人による自己破産でも、調査が必要だとして管財手続きにされることがあります。

 

申立まで長期間かかった理由

自己破産事件では、受任通知の送付で支払を止めてから、裁判所への申立までに時間がかかると、裁判所からなぜ申立が遅れたのか理由を説明するよう求められます。

自己破産手続きでは、受任通知で支払を止め、その後に書類の準備を進めます。

債権の金額の調査は2,3ヶ月で終了するのが通常ですので、その程度の期間があれば申立ができるはずとされます。

申立費用が分割払いの場合には、5ヶ月程度での申立を進めます。

裁判所によっては、半年から1年過ぎた場合には、理由の説明を求めれます。

今回の事例でも、理由の説明をしています。

支払停止から申立まで長期間かかった理由は、申立人の仕事柄、休日が数日前にならないと確定せず、打ち合わせが長期間できなかったこと、申立人の仕事中は電話が受けられないにもかかわらず電話以外の連絡手段が使えなかったこと、申立人の書類準備に時間がかかったこと等によるものだとしています。

 

裁判所は、このように長期間が過ぎてしまった事件で説明を求めるのは、その間に事情変更があったり、財産変動がないかをチェックするためです。

過去には、準備の対応が遅く、数年も時間がかかってしまった事件で、それを理由に管財手続きとされ、費用負担が増えてしまったものもあります。

受任通知後も安心せず、しっかり準備を進めてもらう必要があります。

 

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