自己破産ケース
ケース紹介
ケース紹介192
Sさんの事例
30代 / 女性 / 休職中
借入の理由:ストレス障害、生活費
厚木市にお住まいの30代女性のケースです。
引っ越しに伴い、督促状などが届くようになったので、消滅時効の相談がありました。
この記事は、
- 消滅時効の援用ができなかった人
- 債権回収会社から裁判を起こされている人
という人に役立つ内容です。
消滅時効と自己破産
10年以上も支払っていない借金の督促状が届くということで、消滅時効の相談に来たという経緯でした。
しかし、話を聞いていくと、裁判を起こされていてもおかしくない業者も含まれていました。
そこで、督促状の内容や、信用情報機関の内容から、明らかに消滅時効期間が過ぎている債権者のみ消滅時効の援用を行い、微妙な時期の業者は保留にして進めていきました。
実際に、調査に入った業者については、すべて消滅時効が成立していたため、時効援用の手続を行い、支払義務はなくなりました。
しかし、残念ながら、そのタイミングで、裁判を起こされたという訴状、呼出状が届いてしまいました。保留としていた債権者から、消滅時効を止めるための裁判を起こされたのでした。
過去にも裁判を起こされていた
消滅時効期間については、消費者金融であれば5年です。
しかし、裁判を起こし、判決を取られると、そこから10年間となります。
裁判を起こされた場合には、裁判所からの訴状や呼出状が特別送達という郵便方法で送られます。
今回、届いた訴状には、過去に裁判が起こされ、判決が出されていたことが記載されていました。前回の判決から10年が過ぎそうなので、今回の裁判が起こされたという経緯でした。
ところが、相談者は、過去の裁判に関する書類を受領した記憶がないとのことでした。
当時の判決記載の住所地には居住していたとのことです。一人暮らしだったとのこと。住民票上の住所にいない場合には、公示送達などで判決が出ていることもあります。また、家族と同居している場合、同居家族が受け取って、渡し忘れていたということもあります。
今回の場合には、このような事情がなさそうです。
裁判の送達方法を調査
そこで、今回の裁判では、過去の裁判時の送達方法についての開示を求めました。
裁判手続きについては、一定期間は資料が残されていますが、今回のケースでは判決以外の部分については裁判所に記録が残されていませんでした。
訴えてきた原告側に対し、送達方法の記録が残っていれば開示するよう求めました。
もともとは、モビットが債権者で、過去の裁判でも原告になっていました。その後、アビリオ債権回収に債権譲渡され、今回の裁判では、アビリオ債権回収が原告となっていました。
当事者が異なるため、記録が残っているか微妙でしたが、アビリオから開示された証拠によれば、送達日等の特定がされました。
相談者自身、記憶違いと判断し、過去の裁判の内容は争わない方向となりました。
なお、金融機関ではないものの、知らない間に判決を取られているという詐欺事件もあるため、疑問がある場合には過去の裁判記録などを調べておくほうが無難でしょう。
アビリオ債権回収裁判での和解交渉
裁判を起こされた請求額は、元金は50万弱であるものの、遅延損害金を含めると、200万円以上となっていました。
相談者は、現在、病気により昨年収入はゼロとのことでした。
元金程度であれば、親族の援助が受けられるかも、とのことだったため、裁判外で和解交渉を進めてみました。
しかし、アビリオ債権回収は、基本的には請求額200万円ベースでの和解でなければ応じないとの強気のスタンスでした。
裁判を起こされていないような事例では、債務者の事情によって元金程度で和解ができることもあったのですが、裁判を起こした案件ということで、交渉の余地は全くないとのことでした。
そこで、やむなく、アビリオ債権回収1社のみを債権者として自己破産の申立を進めることになりました。
アビリオ側は、破産のことを伝えられても和解は困難という態度でした。一般的には、破産されるくらいなら元金だけでも受け取ったほうが良いのでは?そちらのほうがトクなのだから、和解に応じるはずだと感じる人も多いです。しかし、金融機関には、単純に受領額の多い少ないだけで和解に応じるかどうか決めているわけではありません。
貸し倒れ処理ができるか、経営状況によっても変わってきており、少額の和解金を受け取るより、自己破産をしてもらったほうが良いと言い切る担当者もいます。
自己破産の理由
自己破産であれば、借入理由の説明が必要になります。
時効が成立しなかった場合の自己破産の特徴としては、借入をしていた時期がはるか昔なので、どのような生活状況だったのか、何に使ったのかもはっきり覚えていないという点があります。
借金の理由を説明するには、当時の収入や生活状況を説明し、その家計状況で不足があったことを示します。
今回のケースでは、借入時には、月収20万円程度の収入がありました。
一時的な支出でお金が足りないときに、モビット等から借入をしたものの、返済は問題なくできていました。
しかし、上司のセクハラが原因で、ストレス障害と診断され、退職しました。その後、半年程度は、傷病手当金をもらい、生活していました。
傷病手当金の支給も終わったため、生活費にも不足し、借金の返済ができなくなってしまいました。
その後、単発の派遣社員やアルバイトなどをして生活をつないでいて、返済できる余力はありませんでした。
収入が減ってしまったことが借入の原因という説明です。
新型コロナウイルスでの減収
その後、業務委託の自営業を始め、月に20万円程度の収入を得られるようになりました。
しかし、新型コロナウイルスの影響で仕事を休職。
一人暮らしの家賃等も負担できなくなり、親の住むマンションに引っ越し。
この頃、督促状が届いていた借金を整理しようと考え、消滅時効の手続きを取ったという相談でした。
裁判を起こされていること、仕事の再開見込みもなく、一括で支払は難しいことから、支払不能であることを示したという経緯です。
自己破産での確定申告書の説明
いわゆる個人自営業者とは異なるのですが、外部からの報酬を受け取っているため、事業収入が過去にありました。
このような場合、確定申告書の提出が必要です。
事業者の場合、事業資産などわかりにくい財産も多いため、確定申告書はチェックされます。
今回の直近申告書を見ると、普通預金の金額が700万円以上あることになっていました。
これが事実であれば、借金を支払えることになります。現在、ないとしても、近いところであったのであれば、その使途を追及されます。
個人事業でクラウド会計などを利用していると、自動仕訳の設定ミスなどで、このような異常値になっていることがあります。税理士が関与していない案件などでは、そのまま税務署に提出してしまっていることも。
今回も、内容がおかしいということから、帳簿までさかのぼってチェックしました。
会計ソフトに入力する際、普通預金からの出金を記録していなかったため、預金残高が積み上がってしまっているミスでした。
仕訳帳の普通預金の箇所を提出し報告書で説明する形となりました。
ミスであることが明らかであれば裁判所も問題にしませんが、帳簿などがないと要調査とされることとなりますので、会計処理にはお気をつけください。
自営業者の自己破産では、早めに申告書等を弁護士にチェックしてもらった方が良いでしょう。
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