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 Nさんの事例

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30代 / 男性 / フリーランス

借入の理由:病気による減収、買い物依存


神奈川県厚木市にお住まいの30代男性のケースです。

ニコスなどのクレジット会社、銀行からの借り入れのほか、日本政策金融公庫等からも融資を受けており、1500万円以上の借金があり、自己破産の相談がありました。

事情を聞くと、ストレスで買い物依存のような状態になってしまったとのこと。自己破産手続きの中では浪費になるかどうかがポイントになりそうです。

 

この記事は、

  • 買い物依存で多額の借金がある
  • フリーランスで自己破産を考えている

という人に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.12.24

 

ストレスによる買い物依存

カードを作成した当時、会社員として働き、年収500万円程度はありました。

JCB、ニコスなどのクレジットカードをポイント目的で作成し、日常的な決済方法や仕事上の立替費用の支払として利用していました。当時、引越しをしたこともあり、そのような一時的な支出にも利用していました。

数年後、仕事上、過度のストレスを感じるように。

生活習慣が乱れがちになり、酒や買い物に依存するようになってきました。

具体的には、無報酬残業が長時間化していたほか、顧客や上司からも、精神的圧力を受け、体調が悪化していたとのことでした。

ストレスにより不眠や幻聴の症状があらわれ、出社が困難になり、精神科を受診。

うつ病と診断され休職するに至りました。職場の同僚でも、同様に発症していた人が複数いたとのことです。

今ならば労災申請を検討するような事案といえるでしょう。

 

休職による借金増

休職により返済のあてにしていたボーナスの支給がなくなり、医療費支出が増えたり、食費が増え、生活費不足で借入が増えたとのことでした。

収入が減って、支出が増えるという借金家計になってしまいます。

その後、休職期間を経て、職場復帰するも、症状は不安定でした。

休職を繰り返したり、生活環境を変えるなどもしましたが、改善しなかったとのことです。

当時の職場で勤務を続けるのは難しいと考え退職。

 

フリーランスとして稼働

新たな職業を模索し、講座に通い、その費用についてもカードで支払いました。

その後、フリーランスとして活動するようになったとのことでした。

講座に通う研修費用やスキルアップのための費用について借入で補いながら、働いていました。また、利便性を考え、都内近辺に転居しました。その不足費用も借入を利用しました。

仕事を辞め、独立することになりました。

研修費用などの経費や転居費用はかかっているものの、フリーランスとしての収入を得られるようになっているので、事業としてはうまくいっている状態でした。

収入が少ない時期には、アルバイトで生活費を稼ぐなどの柔軟な対応もしていました。

 

コロナ減収

しかし、新型コロナウイルス感染症拡大により、仕事が激減。

そのストレスからかうつ病の症状が再発。

少ない仕事も、中途半端な状態になってしまい、大口取引先を失ってしまいます。

コロナ減収による融資を受けたり、給付金を受給しましたが、収入は戻らず。

通院が必要な状態となってしまいます。

生活費を下げて、借金返済を進めようとするも、収入が伸びないので厳しい状態でした。

 

再び買い物依存

病気の影響もあり、買い物依存的な行動が増えてしまったとのことです。

主治医に相談したところ、100万円以上の買い物エピソードがないため、確定診断はできないものの、他の病気の可能性を示唆されました。

債務状況が改善せず、病気の症状が悪化したため、自己破産の相談に来たという流れでした。

 

自己破産と換金行為

自己破産では、過去の換金行為について報告が必要です。

換金は、内容によって免責不許可事由となります。

 

クレジットカードショッピングが多い人のなかには、換金行為をしている人も一定数います。

換金行為については、ショッピングでの購入価格、時期と換金価格、時期を報告します。

電化製品、PC関連商品などの物の換金だけでなく、アマゾンギフト券などのデジタルなものの換金も含まれます。

換金のやりとりが記録に残っていれば、それを提出します。

過去1,2年で数十万円の換金行為があったため、それを報告しています。

また、クレジットで購入した物品については、換金の報告を裁判所にするだけではなく、クレジット会社に報告しなければならないことも多いです。

分割払いが終了するまで購入商品は、クレジット会社の所有権留保がついていることも多く、クレジット会社から引き上げたいと要求されることもあります。そのような要求があったのに換金していて手元にないという場合には、クレジット会社に報告しなければなりません。

もちろん、クレジット会社からは、免責に関する意見が出される可能性があります。

 

免責不許可事由がある場合の意見書

ギャンブル浪費、換金行為などは免責不許可事由とされます。

このような免責不許可事由がある場合、破産法の免責不許可事由になるのか、なるとして裁判官の裁量免責が相当ではないかという意見書を提出します。

今回も、換金行為について不利益処分とはいえるものの、破産者の当時の事業収入からすれば、債務返済可能性もあったことから、破産遅延目的とは認められないとの意見を出しています。

破産者が支払不能状態に陥ったのは、新型コロナウイルスの影響による事業収入の激減が原因であり、上記換金時期には、これらは予想困難な事情であったと主張し、破産管財人も裁量免責が相当との意見を出し、裁判所でも裁量免責の許可決定が出されています。


自営業者の売掛金と自己破産

フリーランスのような自営業者の場合、毎月、請求書を発行して売掛金を回収するという流れのことが多いです。

このような請求をして未回収の権利があれば財産となります。

原則として、破産手続き開始決定時の未回収売掛金については、破産管財人が回収することになります。

しかし、自営業者の場合、その売掛金が、会社員の給料と同じく生活の基盤であることが多いです。

そのような実態は考慮され、よほどの金額でなければ、自由財産の拡張の申立により、自分で回収、手元に残せることになるでしょう。

今回のケースでも、未回収売掛金が約14万円あったものの、自由財産拡張により生活費として使うことができています。

 

動産について自由財産拡張

自営業者の場合、一定の財産は差し押さえが禁止されている自由財産として残せます。

Q.破産財団、自由財産とは?

 

それ以外の動産類も、業務に関係があるなどの事情によって、自由財産拡張が認められ、残せることも多いです。

今回も、自宅にあったプロジェクタや仕事で使っていたアーロンチェアなどの動産も自由財産として残すことができています。

 

 

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