自己破産ケース
ケース紹介
ケース紹介182 Kさんの事例
50代 / 男性 / 相続不動産、自由財産拡張
借入の理由:会社員
神奈川県平塚市にお住まいの50代男性のケースです。
住宅ローンの残債務が債権回収会社に回されて、1000万円以上の債務が残ってしまっているとの相談でした。
相続不動産があるのと、自由財産拡張の申立が特徴となります。
この記事は、
- 平塚市内で自己破産を検討している
- 遺産分割をしていない相続不動産がある。
という人に役立つ内容です。
収入の25%で住宅ローンを組む
10年以上前に、三菱UFJ銀行で住宅ローンを組んで自宅を購入。
毎月の返済額が10万円程度で、月収が40万円弱だったので、十分に返済できると考えてローンを組みました。
一般的にも収入の25%程度の住居費であれば問題ない家計と言われます。
クレジットカード利用もありましたが、ガソリン代の支払などの日常生活費に使っていたもので、支払に問題はありませんでした。
不動産会社による詐欺被害
自宅を購入した際に、不動産会社の営業マンからは住宅ローン減税が使えるという話でした。
しかし、実際には、耐震基準を満たしていないことから使えないことが発覚。
そのことを不動産会社の営業マンに伝えると、外構工事をすれば大丈夫と言われ、信用金庫等から工事費を借り入れることになりました。
ここで予想以上のコストがかかってしまいました。
その後、この営業マンからは、良いアルバイトがあると言われ、公証役場に連れて行かれ、保証人にさせられてしまうなど、詐欺事件にも巻き込まれてしまいました。
結局、この保証債務はなくなったものの、自宅購入や外構工事についても不審点があったといえるでしょう。
自宅不動産の任意売却
約2年前、タクシードライバーとして働いていたのですが、収入がどんどん下がっていき、手取り月収が20万円を下回るようにもなってしまいました。
このままでは、住宅ローンを払い続けるのは難しいと考え、家を売りに出しました。
同時に、収入を上げるために始めた製造派遣の仕事も体調を崩してしまい続けられなくなりました。
収入の25%なら住宅ローンは大丈夫、という考えは、収入が維持できることが前提です。
収入を増やそうと調べ、軽貨物の仕事を始めるものの、言われたような収入を得ることはできず、すぐに断念。
数カ月後には、自宅を任意売却しましたが、住宅ローンを完済できるような値段では売れず、元金でも500万円以上の住宅ローンが残ってしまいました。
任意売却とは、住宅ローンが払えない場合に、銀行などの住宅ローン債権者と協議し、承諾を取れる金額で市場で売却する方法です。不動産会社でも、このような任意売却を得意とする業者もいます。
銀行と協議せず、住宅ローンの支払いを止めた場合には、住宅ローン債権者が主導して、裁判所で売却してもらう競売となります。
住宅ローン残金の請求
住宅ローン債権者は、任意売却や競売によって不動産の売却代金をローン返済にあてた後、残金の請求をしてきます。
保証会社や債権回収会社によっては分割払いを認めてくれることもありますが、基本的には一括請求です。
多くの場合、支払いは難しくなってしまいます。
今回も、住宅ローンの残金の請求があり、信用金庫のローンなどもあったため、払いながら生活を続けるのは難しいと考え、法律相談に来たという経緯でした。
遺産分割未了の不動産
自己破産では、自分名義の財産以外に処分対象とされる財産もあります。
そのなかに、相続財産で遺産分割が未了の財産があります。
親などがすでに亡くなっていて、相続が発生しているものの、話し合いができていないため、亡くなった人の名義のままの財産です。
まだ親の名義であったとしても、法的には相続が発生しています。法律で取得できる法定相続分の権利はあります。
これは、本人の財産とされるのです。
相続財産の内容にもよりますが、不動産があるような場合には、破産管財人が選任され、相続財産の回収などをすることになります。他の相続人と協議をして遺産分割を進めるなどするのが通常です。
そのため、管財人の選任のための予納金も必要になりますし、破産手続きも長引くことになります。
相続放棄と自己破産
相続については、プラスの財産もマイナスの財産も取得しない相続放棄制度があります。
これは、相続人の間で、「自分はいらないから」などと放棄する趣旨を伝えるだけでは足りません。
家庭裁判所に申請する必要があります。
相続放棄の期限は、熟慮期間と呼ばれる3ヶ月というものがあります。
これを過ぎると相続放棄はできなくなります。ただし、熟慮期間のスタートについては、相続財産を認識してからという判例もありますので、亡くなってから3ヶ月を過ぎていても相続放棄が認められることもあります。
亡くなった親名義の財産があっても、家庭裁判所で相続放棄を済ませている場合には、その相続放棄受理証明書を提出すれば、破産手続きで自分の財産とはされません。これを理由に破産管財人が選任されることもないでしょう。
今回のケースでは、亡くなった親名義の相続不動産がありました。かつ、何年も経過しており、財産の認識もしていたため、相続放棄はできないというケースでした。
また、他の相続人とも協議ができないということで、管財手続きとして進めることとなりました。
会社の設立でも管財手続きに
管財手続きとなった原因として、合同会社を設立していたという点もありました。
軽貨物の自営業時に、合同会社を設立したとのことでした。
軽貨物の仕事で利益が出たら合同会社名義にしたほうが良いと聞いたので、設立しておいたとのこと。
しかし、その後に取引先に聞くと、そんなに利益が出ないと言われ、結局、休眠会社にしてしまったものです。
会社名義での預金口座開設もしていませんし、何も財産がありません。動きがないので決算もしていません。債務もありません。
法人代表者の場合、それだけで管財手続きによりしっかり調査をしなければならないとされる傾向にあります。
今回のような設立しただけの法人で、債務もないような場合には、それだけで管財手続きにされる可能性は低いですが、要調査とされることは間違いありません。
デポジット型のカード利用
自己破産をすると、クレジットカードは使えません。
借金ができないのはもちろんなのですが、決済方法としてのカード利用ができないのは不便だという声もあります。
そのようなときにデポジット型のカードを利用することが考えられます。
一定金額を預け、そこからクレジットカードと同じように利用する方法です。デビットカードと似ていますが、デビットカードが使えないもののクレジットカードは利用できる、という場所では活用できるです。
この場合、預金通帳には、カード会社の名前が載ります。
借金としてのクレジットカード利用ではなく、デポジット型であることの説明が必要になります。
今回も、ライフカードの引き落としが記載されていたため、借金ではなく、デポジット型のカードであることを説明しています。
10万円を預け、それが限度額となり、決済手段としてカード払いと同じように使えるものです。利用分が銀行引き落としとなり、常に10万円が保証金となるように設定されています。
こちらの預託金は財産と認定されることになりますが、管財手続きであれば自由財産拡張が認められることでしょう。
自己破産後の自由財産拡張の申立て
管財事件となりましたので、預貯金等について自由財産拡張の申立てをしています。
破産手続きの財産処分の基準時は、破産の手続き開始決定時です。
まず、預金について、破産手続き開始決定時に30万円を上回る残高がありました。
しかし、これは、破産者の給料日直後の入金をしたことによるタイミングだったことによるものでした。
主に変動がある銀行の預金口座の推移からすれば、毎月の生活費支出により給料日前には20万円を下回る残高となっていることが認められました。
家計状況からも生活に余力があるものでもなく、生活のためにも預金について自由財産拡張を認めるのが相当との意見書を出しています。
また、自動車については、減価償却期間が大幅に経過しており、無価値と評価できました。自動車を通勤手段として使用することで、現在の収入を得ていることから、必要性が高く、自由財産拡張が認められるべきであると意見を出しています。
デポジットの保証金についても、現在の日本では、キャッシュレス決済が推進されており、同決済方法として、デポジット型のカード決済を利用する必要性も高いと主張。
同保証金については、この決済方法を利用するための最低限のコストであり、財産性が低いことから、自由財産拡張が認められるべきであると意見を出しました。
これらの財産は自由財産拡張が認められ、残すことができています。
免責についても、もともとが住宅ローンの問題ですので、不許可事由はなく、認められています。
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