自己破産ケース
ケース紹介
ケース紹介178 Yさんの事例
20代 / 男性 / 会社員
借入の理由:ネットワークビジネス、婚約破棄
秦野市にお住まいの20代男性のケースです。
もともとがネットワークビジネスでの失敗ということで、消費者金融等以外に、個人債権者が多く含まれている相談でした。
この記事は、
- ネットワークビジネスで多額の借金
- 婚約不履行で慰謝料請求されている
という人に役立つ内容です。
ネットワークビジネスでの借金
数年前に飲酒運転で交通事故を起こしてしまいます。無保険だったため、自分と相手方の車の修理費や、事故の罰金を父に立替えてもらい、仕事ができなくなったので家賃や携帯代などの生活費も父に借りました。当初は、親族からの借金でした。
この借金返済が辛くなり、友人から紹介されたネットワークビジネスの儲け話にのってしまい、勤めていた会社を退職。
会社員時代には、月20万円ほどの収入があったのに、ネットワークビジネスでは全く稼げず、月収が5~10万円程度になってしまったため、消費者金融から生活費を借り入れる状態に。
食費や携帯代などが足りず、当時の婚約者からもお金を借りるようになりました。
飲み屋で知り合った人からお金を借りる
ネットワークビジネスの収入では生活できなくなり、借金の返済も厳しくなってきました。
そこで、半年ほど前に飲み屋で知り合ってから仲良くしていた知人から、以前、お金に困ったら連絡して、と声をかけてもらったことを思い出し、相談。
借金の返済に充てるようにと、お金を貸してもらえたものの、当時の婚約者が連帯保証人になり、金銭消費貸借契約の公正証書を作成しています。
公正証書とは
公正証書とは、公証役場で作成する書面です。遺言などの1人で作成する書面もありますが、養育費支払など、2人の合意書類を公正証書として作成することも多いです。
公正証書の一番の特徴は、裁判所の判決などがなくても、財産を差し押さえられるところです。
金銭の支払条項に限りますが、強制執行認諾条項をつけることで、支払が遅れた場合には、公正証書を使って相手の財産を差し押さえることができるのです。
借金の分割払いや養育費のように長期間の支払をする場合に、つけることが多い条項です。
この設定をしたいがために、公正証書を作るということも多いです。
借金を借り換えできたものの、このように強い効力の書類を作らされ、連帯保証人までつけられているため、消費者金融の借金よりも取り立てられる確率が高いといえるでしょう。
公正証書謄本の受領
債権者との間で公正証書を作成したものの、その写しが手元になく、内容を確認できないということもあります。
そのような場合、謄本の再発行をしてもらえます。
公証役場に行けば手続きができますが、遠方の場合などは、電話で問い合わせたうえで、郵送での手続きもしてもらえます。
今回も遠方の公証役場とやり取りをし、郵送で申請をしています。
謄本請求申立書の書式をFAXしてもらい、必要書類とあわせて郵送。
公証役場でで審査して問題なければ、謄本と請求書を郵送してくるという流れです。
当事者本人からの請求の場合、謄本請求申立書に記入、実印で押印し、印鑑証明書を添付します。さらに、顔写真付きの免許証などのコピー、本人の住民票のコピーが必要です。
この手続自体を弁護士に依頼する場合、謄本請求申立書には、弁護士印で押印し、当事者本人の委任状(実印)、印鑑証明、代理人の顔写真付きの身分証のコピーなどを添付します。
委任状は事前にFAXして内容を確認してもらいます。
婚約破棄による慰謝料
その後、定職につくも長くは続かず、フリーターとして生活。
婚約者に不信感が募ることがあり、将来一緒にやっていくのは無理だと思い、婚約を解消したそうです。
相手からは、婚約破棄の慰謝料と結婚式場のキャンセル料を請求されることに。
婚約破棄についても、正当な理由がなく一方的に破棄した場合には、慰謝料請求などの損害賠償請求が認められます。
婚約破棄の紛争では、
・婚約しているか
・破棄の正当性
の2点が争点になることが多いです。婚約については、諸事情で考慮されますが、式場の予約が済んでいたことや、借金の保証人にもなっていることからすると、婚約自体を争える事案ではないでしょう。
破棄の正当性についても微妙なため、慰謝料などの損害賠償債務も、債権者一覧表に記載したうえで、自己破産の申立てをしています。
慰謝料の支払義務と非免責債権
自己破産は、免責が許可されれば、支払義務がなくなります。
しかし、債務の中には、非免責債権と呼ばれるものがあります。これに該当すると、免責許可が出ても支払義務が残ります。
ここで、慰謝料が問題になります。
不法行為については、破産法では、悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権は免責の対象外とされます。
ここでの悪意とは、積極的な害意とされています。
よほどのことがない限り、婚約破棄の慰謝料についても免責許可が出れば支払義務がなくなるといえるでしょう。
ネットワークビジネスの借金の特徴
ネットワークビジネス関係の借金の場合、消費者金融やクレジット会社に対する借金以外に、知人に対する借金が多く含まれることをよく見かけます。
ネットワークビジネスやマルチ商法は、基本的には、友人、親族、同僚などの知人を巻き込んで利益を上げる手法です。人脈を金に替える商法とも呼ばれています。
そのため、知人に被害を与えるだけでなく、そのやりとりの中で、知人自体から借金をするということも多く見られるのです。
その際に、ネットワークビジネスで利益が出たら返す、などの説明がされるなどして、トラブルになりやすいです。
個人債権者が多いと管財事件になりやすい
自己破産では、簡単に手続きが進められる同時廃止手続きと、破産管財人を選任する正式な管財手続きがあります。
管財手続きの方が費用が高く、破産をする人にとっては負担が大きくなります。
財産があったり、管財人による調査が必要な場合には、管財手続きに回されます。
調査が必要な事件としては、免責不許可事由がある場合が挙げられます。
ギャンブル、浪費、換金等の免責不許可事由があると、管財手続きになりやすいです。2回めの自己破産という場合も管財手続きの確率が上がります。
このような要調査の中に、個人債権者が多い場合も含まれます。
消費者金融等は、ほとんどのケースで、自己破産の申立てがされれば、特に破産手続きに異議を出してくることもありません。ただ、金融機関以外の債権者では、破産手続きに対する理解ができていないことも多く、異議を出してきたり、免責に関しても意見を出してくることがあります。
そのような対応のため、個人債権者が多い場合、免責不許可事由が多少でもあると管財手続きにされやすい傾向となります。
偏頗弁済
受任通知後、借金の支払いは事実上止めます。
他の借金の返済を止めているのに、一部だけを支払ってしまうことは、偏頗弁済と言われます。
不公平な弁済です。
偏頗弁済は、状況によっては、免責不許可事由になります。
また、破産管財人の否認権の対象となり、管財人によって取り消して、弁済したお金を取り戻す対象になることがあります。
今回のケースでは、公正証書を作成した債務について、保証人もいたことや、債権者の反応が怖かったこともあり、返済をしてはいけないと分かっていながら、支払ってしまったという事情がありました。
受任通知後に、約30万円の偏頗弁済をしてしまっていました。
受任通知後の債務負担
さらに、受任通知後に、債務が発生してしまっていました。
自己破産予定なのに債務負担をするというのは、詐欺に近い話になってしまいます。
脱毛の費用を負担してしまったというものです。
自己破産の依頼時には、全債権者を届け出しなければならないことや、今後の借入等は禁じられているという説明をし、一筆をもらったりもするのですが、このような事態になってしまうこともあります。
法律事務所によっては、これを理由に辞任するということもある内容です。実際に辞任されてしまったということで、ジン法律事務所弁護士法人に相談に来る人もいます。
管財事件の費用を積み立て
色々と問題がある事案でしたが、当初は、同時廃止手続きでの自己破産申立てをしました。
しかし、裁判所の審査の結果、やはり管財事件とするとの決定がされました。
個人再生権者の点や偏頗弁済、受任通知後の債務負担などがあり、免責調査型の管財手続きとされたものです。
この場合、管財予納金として20万円を準備する必要があります。
裁判所の運用によって違いますが、神奈川県内では、4,5回程度の分割払いは認められる傾向にあります。
毎月5万円程度を積み立てて20万円を貯められたら裁判所に報告、その時点で、破産管財人を選任、破産手続き開始決定が出されるという流れです。
財産の基準時なども破産手続き開始決定時となりますので、急ぎたい場合には、20万円も早めに準備する必要があります。
破産手続き中の住所変更
管財手続きの場合、住所変更の際には、破産管財人の承諾をもらったうえで裁判所に届けます。
管財業務に支障がある場合には問題が出てくるからです。
通常の引っ越しや、自宅の任意売却に伴う退去など、ほとんどの場合には、破産管財人が反対することはありません。
ただ、手続上のルールとして、破産管財人への連絡は必要なので、依頼した弁護士に相談しながら進めるようにしましょう。
変更後の住所が決まった段階で報告、事実上の承諾をもらったうえで、移転後の住民票の写しを添付して承諾書に破産管財人の押印をしてもらい、裁判所に提出する流れです。
反省文の提出による裁量免責
免責不許可事由があっても、裁判官の裁量で免責をもらい、借金をなくすことができます。
このような裁量免責は、破産管財人の意見が重視されます。
免責不許可事由がギャンブル、浪費等の場合、家計状況の提出や反省文の提出を求められることもあります。
これは破産管財人によって異なります。
社会人になってから反省文を書くことは少なく、書き方について相談に乗ることもあります。
弁護士が反省文自体を書くことはできませんが、形式面やポイントについてのアドバイスはできます。
今回も反省文の提出をし、無事に裁量免責の許可をもらえています。
反省文のポイントについては、以下でも触れています。
秦野市での自己破産
秦野市にお住まいのため、自己破産の申立は横浜地方裁判所小田原支部にしています。
破産管財人は、住所に近い場所の弁護士が選ばれることが多いですが、小田原近辺の弁護士になることも多いです。
裁量免責を狙った自己破産相談も受け付けております。ご相談は無料で受け付けています。
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