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ケース紹介

 

ケース紹介120 Kさんの事例

30代 / 男性 / 自営業

借入の理由:不動産投資


横浜市泉区居住の30代男性のケースです。

事業の失敗による債務があり、今の収入はわずかなため返済できないという相談でした。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.7.30

日用品の購入でカード作成

当初、実家に居住し、コンビニのアルバイトで数万円の収入を得ているような生活でした。

日用品の購入、スマホで扱うアプリの購入などにクレジットカードや楽天カードを利用。

多少のゲーム課金をすることもありました。ただ、収入の範囲内での利用で、問題なく払えていました。

アルバイト先を変えつつも、ネットで稼げる方法を探していました。

 

キャッシュバック事業

一時期、インターネット上でも稼げる方法として謳われていた携帯電話契約を利用してのキャッシュバックを事業として始めたとのことです。

携帯電話を契約したうえで、MNPを利用することでキャッシュバックを得られるという話を知ったのがきっかけでした。

これを少しずつ試して、個人事業として開始。

ドコモやソフトバンクなどのキャリアにMNPで契約をする際に、スマホ機種を割引で購入するとともに、MNPによるキャッシュバックを受けるというもの。

その後、一定期間、経ってから、キャリアの契約を解約し、スマホなどの端末を売却。

このような流れだと、通信費や違約金を支払っても、端末売却代金とキャッシュバックによる利益のほうが大きくなるとのことでした。

キャリアによるキャッシュバックでの顧客囲い込みは問題視されていて、このような歪んだ利益が得られるということも、一時、話題になっていました。

自己破産をする人の中にも、このような行為をしている人がいます。

誰でも稼げるというような情報商材などにお金を出している人が、実際にこれらの行為で多少の利益を得ているということもあります。

 

事業の拡大化

このやりとりを拡大すると、利益が増えるというのが相談者の理屈でした。

たしかに、1つの取引で多少の利益が出るのであれば、事業として拡大することも選択肢になります。

複数のショップと継続的に、このような取引を続けていました。

このような取引をするにも資金が必要なため、当初の機種購入や通信費支払、違約金支払をクレジットカードで支払っていました。


複数の取引をすると、カードの限度額になってしまうため、違うカードに切り替えたり、銀行での借り入れで違約金を支払ったりしていました。


一時期は、順調に利益が出て、カードの利息を払っても月30万円程度の利益になっていたそうです。

確定申告もしていました。

 

政府による規制

しかし、その後、政府によるキャッシュバック規制が入り、端末値引きも規制となりました。

それまで取引していたショップからも、今までのようなキャッシュバックができない、端末の値引きはできないと言われてしまいます。

徐々にキャッシュバック額が減っているものの、一定のお金が入ってきたので、それまでのように取引を続けてしまいました。

数ヶ月のスパンがあり、資金繰りに追われていたため、取引の実態が把握できていなかったようでした。

過去の取引について税務調査を受けたので、相談しながら整理したところ、大幅な赤字になっていることが判明。

税務署もこのような取引に不信感を抱いて調査に入ったものと思われますが、赤字となると調査官にとっては残念な結果ですね。

そのような実態を把握でき、取引を続けても赤字が増えるだけだったので、この事業を停止。

しかし、それまでの債務が多く残ってしまっていました。

制度の歪みを見つけて利益を出すのは、ビジネスの手法ですが、そのような歪みがいずれ修正させることがリスクではあります。撤退時期を見誤ったことと、複雑な取引になるので管理しきれていなかったことが債務を負ってしまった原因といえます。

 

本件は、このような債務負担の経緯からして、管財事件となりました。

 

FX、仮想通貨取引

申立準備のため、預金通帳の写しを確認すると、仮想通貨の取引所やFX会社への送金が確認できました。

当然ながら、要調査事項となり、これらの明細も提出することとなります。

海外の取引所も使っていたため、口座残高の資料等を提出しています。

また、FX取引について、取引量は多くないものの、投資のオンラインサロンに加入、主催者から指示されて管理を任せていたような取引もあり、そのようなやりとりも証拠提出しています。

このようなキーワードに、裁判所や破産管財人は怪しさを感じ、調査の度合いが高まることが多いです。

仮想通貨での資金移動をしている場合には、その移動先、送金理由なども確認が必要なところ、銀行取引よりも明細が見にくいこともあり、説明が大変になってしまうことが少なくありません。

 

直近の出金の明細

裁判所には、自己破産申立時に過去2年分の預金取引明細を提出します。

ここで大きな資金移動は調査されます。

とくに、数十万円単位で出金している場合には、その使途の説明を求められます。場合によっては、領収書などの資料提出を求められることになります。

これは、出金して現金として財産を隠し持っていたり、親族の預金口座に移しているのではないかという調査です。

税金、国民健康保険料の支払、問題ない時期に返済に使ったなどの事情がある場合には、これらの資料を提出していくことになります。

今回のケースでも、過去にさかのぼり、大量の領収書等のチェック、明細提出をフォローしています。

 

これらの対応により、免責許可を受けることができています。

事業での債務でお困りの方、仮想通貨取引、FX取引等をしていたことで、自己破産準備に頓挫している方などは参考にしてみてください。

 

 

 

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