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ケース紹介117 Kさんの事例

50代 / 男性 / 会社員

借入の理由:コンビニ経営


綾瀬市居住の50代男性のケースです。

公的機関、銀行、信販会社に約1500万円の債務があり、支払ができないという相談でした。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2022.9.17

事業資金

家計の収支関係を確認していくと、フランチャイズによるコンビニ経営をしてきた方でした。

親族から500万円の開業資金を借りておりましたが、返済はしていませんでした。それ以外にも、生活費が足りないときに金融業者から一時的に借り入れることはありましたが、返済は出来ていました。


しかし、親族が突然全額返済を求めてきたため、借り入れをして、返済。

さらに、この頃、近所に競合のコンビニエンスストアが出来たことにより、売上が年間1000万円ずつ下がり始めていました。そのため、債務返済のために他の金融業者からも借入をするようになり、徐々に自転車操業状態になっていきました。

事業の初期に親族から借入ができるのであれば、選択肢として優先的に考える人もいるでしょう。

金利、返済方法なども親族の方が柔軟に対応してくれることが多いです。

しかし、親族間だと契約内容もあいまいなため、今回のように、突然一括請求されると対抗できないというリスクがあります。親族関係が悪化したり、配偶者親族からの借入後に離婚したり、相続が発生するなどして、一括請求され資金繰りに苦しむというケースもあります。

そのようなリスクは頭に入れておくようにしましょう。

 

任意整理

従前の債務に上乗せする形で、追加融資も受け、事業の立て直しを図りました。

しかし、売上が回復することはありませんでした。

返済が出来なくなったものの、経費削減により支払ができる見込みだとして、任意整理による解決をしました。

複数のシミュレーションを検討し、半数程度の債権者に対しては、5年を超える回数での和解を成立させるなど、通王の任意整理よりも困難な交渉となりました。

ただ、大手の債権者に足しいて、90回以上の分割払いの合意ができたことから、シミュレーション上は支払いができる見込みとなりました。

とはいえ、事業資金ですので、債務額も大きく、毎月の支払は約18万円という高額な金額でした。

 

事業廃止

任意整理による支払後、経費の圧縮は進めたものの、業績は改善せず、家族からの持ち出しで何とか生活をするような状態になってしまい、新たな借入もしてしまいました。

任意整理後に借入をしてしまうのは、支払不能に進んでいくだけです。

家族の支援も限界に達していたところ、コンビニのフランチャイズの契約更新時期を迎え、事業から撤退することしました。

売上がなくなれば支払いができないため、任意整理による返済を断念、再相談があり、自己破産を選択することとなりました。

 

 

事業清算

フランチャイズの契約終了があったため、破産手続きでもこの点が問題となりました。

まず、事業資産ともいえる在庫商品については、閉店セールを行い、商品は全て売り切ったのでありませんでした。

次にフランチャイザーとの清算について問題となります。

計算書を提出し、売上から仕入れ金額を控除し、そこからロイヤリティーや営業費が差し引かれていたので、その補足説明をしています。

閉店時期の日割り清算、月次売上を算出、計算上は赤字になることを説明。

さらに、退去に伴うレジ撤去費用、ごみ処分費用の負担も発生。

返還される保証金や預託金もなく、相殺できる資産として現存するのは、釣銭準備金程度だったため、フランチャイザーに債務を負うことになる見込となりました。

これらの点を伝え、フランチャイザーを債権者に追加し、事業資産はない旨を報告しています。

 

保険の解約返戻金

事業以外の財産も大きなものはありませんでした。

年払いの保険がいくつかある程度でした。

このような少額の保険の場合には、概算額を解約返戻金として計上する方法も認められます。

 

自動車保険について年払いをしており、保険期間のうち3か月が経過していますので、同保険約款の短期料率は45%となり、解約返戻金を計算するなどしています。

保険金が2万1000円の支払いだった場合、
21,000円×(1-0.45)=11,550円

のように算出する方法です。

 

年払いの自動車保険の他、自宅の賃貸借契約に伴い加入した2年間の家財保険についても、同様に算出する方法が使えます。

 

本件では事情があり個人再生の利用が難しかったですが、コンビニ経営で債務を負った場合に、小規模個人再生を利用する人もいます。

とはいえ、これも、将来の収入から返済原資を作ることが前提なので、経営自体が悪化してしまっている状態だと厳しく、破産などにより事業を清算せざるを得ないことも多いでしょう。

コンビニの場合、他社の競合店により従前の売上が大きく変わってしまう傾向があるので、そのリスクをどれだけ取れれるかが経営のポイントになってきます。


 

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